自然にあらがわない、四万十の暮らしの象徴。

川の蛇行に合わせて両岸に集落が営まれると、となりの集落に行くには川を渡る必要があります。かつては川舟を使って川を渡っていましたが、増水すると渡れなくなってしまうため、今ではコンクリート製の小さな橋がかけられ、住民の生活道として使われています。

「沈下橋」と呼ばれるこの橋は、その名の通り、増水すると沈んでしまいますが、欄干もなく構造が単純なので、水さえ引けばまた使えるようになります。

沈下橋は水害にあらがわず上手にいなす、川とともに生きる知恵が生んだ暮らしの橋なのです。

沈下橋ができるまえ

沈下橋は昭和30年ごろから多く作られ始めます。戦後のお金のない時代、低コストで流されない、安全な橋を!ということから四万十川では沈下橋が広く採用されました。沈下橋が作られる前の渡河の方法は、渡し船や板橋がメインでした。特に渡し船は流域各地で見られるほどメジャーでしたが、舟での渡河は危険を伴い、水難事故も多かったと言います。人命が失われることも度々あり、中村では11名の女学生が亡くなてしまう大事故もあったそうです。また板橋は石積みの上に板を架けただけの至ってシンプルなもので、その不安定な造りから川に流されてしまう事故も度々起こったと言われます。渡河は危険を伴うものだったため、流域の人々は無事に渡りきれるよう渡河の場所に川をはさんで向かい合う「見渡し地蔵」という2体のお地蔵さんを祀りました。今でも沈下橋近くの川の両岸にこのお地蔵さんが残されています。

いろんなNo1沈下橋

▶ 1番古い沈下橋  一斗俵沈下橋(四万十町)

四万十川に現存する一番古い沈下橋は、四万十町米奥にある一斗俵沈下橋です。昭和10年に作られたこの橋は、国の重要有形文化財にも指定されています。苦労の末完成した橋も、直後の台風で中央部が流され、中央部のスパンを長くすることで補修したという、越えがたきいくつもの困難を乗り越えながらやっとの思いで作られました。今はもう車で通ることはできなくなりましたが、夏場には沈下橋で川遊びを楽しむ地元の子どもたちで賑わいます。一斗俵沈下橋は今でもこの地区のシンボル的な存在として住民から愛されています。

▶1番上流にある沈下橋  高樋沈下橋(中土佐町)

四万十川本流にかかる沈下橋の中で1番上流にあるのが高樋(たかひ)沈下橋です。1番上流なだけあって橋の長さも短め。対岸にある農地へ渡るため作られたもので、今でも住民の方が使っています。沈下橋が架かかる場所にはかつて農業用の堰がありましたが、少し下流へ堰を移したため、元の堰を基盤にして沈下橋が作られています。堰のおかげで流れも穏やかで、グリーンに澄んだ水がとってもきれいです。

▶1番下流にある沈下橋  今成沈下橋※通称:佐田沈下橋(四万十市)

四万十川本流で1番下流にあるのが、観光客に大人気の佐田沈下橋。最も下流にあるだけあって川幅も広くなり、橋の長さは291mにもなります。毎年夏休みにもなると多くの観光客でにぎわう四万十川を代表する観光スポットで、テレビドラマのロケ地としても使われました。佐田沈下橋は車両が通れる現役バリバリの橋。普段から住民が道路として使っている場所なので、訪れた際はあまり通行の邪魔にならないように気を付けましょうね。

▶1番最初に沈む沈下橋  向弘瀬沈下橋(四万十町)

四万十町の弘瀬地区にある向弘瀬沈下橋は、本流にある沈下橋のなかでも橋脚の高さが低いことが特徴的。そのため、増水したときに本流で一番最初に沈む橋と言われています。すぐ上流に佐賀取水堰がある影響で、川の水量が少ないことから橋脚が低いのではないか、と考えられています。水面との距離が近いので車で通ると川面スレッスレでスリル満点。四万十を訪れたらぜひ渡ってほしい、地味におススメの沈下橋です。

沈下橋紹介ページ

四万十川財団HP

四万十市HP

四万十市観光協会HP

四万十町観光協会HP