四万十川流域の厳選100種

四万十川流域には季節ごとに美しい花が咲いています。
年間を通じて考えると、その数は数百種類を越えるのです。
そんなたくさんの花の中から、是非皆さんに見ていただきたい厳選100種類をご紹介します。
すべて、今年になってから咲いたものです。時期的にまだのものは、また改めてご紹介します。

No.81 タニジャコウソウ(ジャコウソウ)

絶滅危惧種には選定されていませんが、四万十川流域では稀な植物です。ジャコウソウと比べて、標高の低い山地に見られる傾向があります。名は渓流沿いに生え、全草に香水の原料にされる強い麝香の香りがあることによります。この植物の生えている所には他にコミヤマスミレなども多く、コケ蒸していて、気持ち良い森林浴ができます。森林の指標となるような植物と考えて良いと思います。

(2012年10月8日撮影、四万十市船の川山)

No.82 ナギナタコウジュ

名は片側だけに花をつける花序の形を薙刀に例えたもの。やや深山に生え、全草にその土地を思わせる森林のような芳香があります。写真の個体は中心の茎が無くなっていますが、これは鹿が食べた跡です。(四万十川百名花の82、2012年11月10日撮影、於:四万十市ほけが森)

※本種のように香りのクセの強い植物というのは、これまで鹿の食害というのはほとんど無かったのですが、このような植物まで食べられるというのは異常事態です。山の手入れというのを真剣に考えて、策を早急に講ずる必要があります。

No.83 ハッカ

よく知られたミントの仲間(ペパーミント、スペアミント、クールミントなど)で、湿地に生育します。この仲間ではメントールの含有量が多く、清涼感の強い香りがあります。ガム、ハミガキ、シャンプーや湿布薬、胃腸薬、育毛剤など、日用品から医薬品まで幅広く使われています。湿地の減少に伴って、少なくなっている植物です。(四万十川百名花の83、2012年10月24日撮影、於:四万十市不破)

No.84 レモンエゴマ

No.85カラスノゴマ(ラネンソウ)

名前から美しい花は想像し難いですが、花、姿共に奥ゆかしい趣があります。草丈30~70cm程度、葉は卵形、花は葉に隠れるように咲きます。菩提樹(リンデン)と同じシナノキ科の1年草(1年で開花、結実し、枯死します)。今年の四万十川はとにかく雨(降雨日数)が少なく、どの植物も脱水症状(水切れ)気味です。この植物もみな、へなへなになっていましたが、それでも健在でした。自生地が不用意な草刈りや工事などによって次々に失われ、高知県絶滅危惧種より少ない状態になっています。(2013年9月26日撮影、高知県宿毛市)

No.86 シシウド(シラネセンキュウ)

名は、日光白根山に多いことから、センキュウは生薬名に由来します。四万十川では、津野町新田、梼原町中心部以北の渓流沿いで普通に見られます。高さ80cm~1mにもなる大型の植物で、同じセリ科のシシウドが豪壮で男性的なのに対して、和風で女性的な感じがします。(2013年8月29日撮影、愛媛県久万高原町)

No.87ボタンボウフウ

沿海地に生え、名は葉がボタンに似ることによります。幡多、四万十川流域ではあまり多く無い植物ですが、造花のような花、葉は観葉植物としても観賞価値の高い植物です。(四万十川百名花の87、撮影於:土佐清水市貝の川)

No.88 サザンカ

高知県では野生のサザンカは西武の四万十町辺りまで(分布北限)と考えられています。園芸用にも広く植栽されますが、花が八重や赤色のものが多く、自生のものは花が一重で白色です。四万十川では高山、里山含めて、内陸部の花はもうほとんどが終わりになります。唱歌「たき火」の中に歌われており、花からは里山の懐かしさが感じられます。(2013年11月2~3日撮影、高知県四万十市)

No.89 ツリフネソウ

水湿地に生える一年草で、一年の間に、発芽、開花、結実後、枯死します。そのため、ちょっとした環境の変化ですぐに姿を消してしまいます。移植も困難です。トンボ公園の秋を代表する植物で、四万十川流域ではこのほか四万十町、中土佐町で見られます。花はよく群生して水辺を彩り、見事な景観になりますが、トンボ公園はもとより、この花を観賞に訪れる人が少ないのは、とても残念に思います。(2012年10月8日撮影、四万十市トンボ自然公園)

No.90 ハガクレツリフネ

葉の下に花を付けることから、「葉隠れ」の名があります。四万十川には、ツリフネソウの仲間が3種自生していて、やや標高の高い渓流沿いで、最も普通に見られます。ただし、そはやき植物(本州の東海以西~紀伊半島~四国~九州の太平洋側に分布)の一種で、国内の分布域は広くありません。今年の高知は夏、猛暑、乾燥が続いたため、例年と比べ、花数が少なく、状態も悪くなっています。(2013年8月29日撮影、愛媛県久万高原町)

No.91 ハマナデシコ

白いノジギク、黄色いアゼトウナとよく混生して、海岸のお花畑を形成します。花の少ない晩秋から初冬にかけて開花するありがたい植物です。(2012年11月25日撮影、土佐清水市)

No.92 ヒガンバナ

文字通り、彼岸(9月下旬)の頃に咲くことから、この名があります。日本では結実しないことから、古来、中国から移入された植物と考えられています。学(属)名のリコリスは、ギリシャ神話の女神に由来します。(2013年9月2日撮影、高知県四万十市)

No.93 タコノアシ

海浜湿地ではないが、海に近い湿地に生えます。山間の湿地に生えることは、有りません。以前は、それほどまれな植物ではありませんでしたが(高知県準絶滅危惧種)、この植物の生える湿地というのは、開発の対象になりやすく、ここ数年で、多くの自生地が消失しました。黄色から赤信号に変わっており、保護策が急がれます。名は、花の形をタコの足に見立てたもので、花後、赤く熟すると、文字通り、タコの足になります。ただし、花序の数は8本とは限りません。(2013年9月10日撮影、高知県四万十市)

No.94 ツルフジバカマ

No.95 チャボホトトギス

丈が高くならない(2~3cm程度)ことから、チャボ(矮鶏)の名があります。四万十川では、チャボ(黄花系)、ヤマ、ヤマジノ(白花系)の3種のホトトギスが自生しており、その中で最も普通に見られます。林縁に生え、普通、半日陰の湿った土壌を好みますが、撮影場所は、明るい岩石地で、高山植物のような雰囲気があります。(2013年9月8日撮影、高知県四万十市)

No.96 ヤマジノホトトギス(ヤマホトトギス)

本来は秋の花で、四万十市では9月に開花します。撮影場所のように標高の高いところでは、既に秋の花が咲き始めています。四万十川流域では、上~源流域に行くほど多くなる傾向があり、下流域ではまれ。よく似たヤマホトトギスと比べると葉の幅が狭く、毛が多いことと、ヤマホトトギスでは花弁が反り返り、花が散房(スプレー)状に付きます。(2013年7月28日撮影、高知県梼原町)

No.97 ヤマラッキョウ

山地で見られる花では最も花期の遅い部類に入る植物で、この花が見られるようになると内陸部の花はシーズン・オフになります。根茎にはラッキョウと同じ香りがありますが、食用のものと比べるとかなり小さくて、お腹の足しにはならないようです。(10月20日撮影、四国カルスト)

No.98 アケボノソウ

四万十川では深山の渓流沿いに多いですが、標高1000mを超える山地草原でも見られます。寒い所から順次開花して、高山では9月にはもう開花しますが、最下流の四万十市周辺では、10月下旬頃になります。名は、花にある斑点模様を明け方の星空に見立てたものですが、花自体、星のような形をしていますので、花の集まりが星空、星座のように見えます。

(2013年9月15日撮影、高知県津野町)

No.99 センブリ

里山の競合の少ない場所に生え、ガレ場などに多い傾向があります。「良薬は口に苦し」の諺とおりの植物で、主に胃腸薬に幅広く用いられ、最近では育毛剤にも多く使われています。ただ、山の手入れがなされなくなって生育環境が失われ、数が大変少なくなっています。(撮影於:四万十市勝間川)

No.100 リンドウ

ヤマラッキョウと同じく花期の遅い植物で、山の花のラストを飾ります。園芸品種も広く売られていますが、自生種の方は花付きが仰々しく無くて、スカイブルーの花と共に全体に高山植物の雰囲気があります。また野生のリンドウは草地の管理放棄や園芸採取などにより激減していて、花に出会った時には格別な喜びがあります。(10月21日撮影、四国カルスト)

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