今年のテーマは「幻の魚を探れ!」

協働の川プロジェクトに参加するのは3年目。今年は、中学生たちと川の課題を考えてみたいと思った。何かの変化で少なくなった魚がいる。その魚を知り、川で探し、川を知り、なぜ魚がいなくなるかを考える。中学生の目線からどんな川が見えるか楽しみだった。

6月15日。全校生徒が好きなテーマに分かれるところからスタート。今年は3テーマで、他の2つは「道の駅の地域の食材を使った弁当開発」、「四万十町のキャンプ場の利用を考える」だった。分かれてみると、財団担当の「幻の魚を探れ!」は元気な男子生徒ばかりが集まった。初日は、授業の進め方を話し合い、次回は地域の人にいなくなった魚についてインタビューする練習をした。最初の大事な聞き込み調査頑張りましょう。

7月11日 聞き込み調査

7月11日。聞き込み調査では、川が大好きな2人に、幻の魚について聞いた。

1人目 岡田初穂さん

財団の四万十リバーマスターでもあり十和の川と言えばの岡田さん。最近見なくなった魚やその特徴、どこにいたのかなどを教えてもらった。

岡田さんからの情報

最近見なくなった魚:セカギ

特徴:ドンコやアユカケに似ているが、それよりもエラが張って針がある

場所:岩の落ち込みで白波が立っている下によくいた。中学校下の長沢川でもみた。

なぜいなくなった?:探す人もいないから見てないだけかもしれない。石も少なくなって、川が変わったことが関係あるかも。

みんなで本やネットを使って、この魚の正式名称を推理した。その結果、「ウツセミカジカ」だろうと考えた。ウツセミカジカは、四万十川では絶滅したとされているので、本当に見つけられたらすごい話になる。その後、一緒に川を見に行って、いそうな場所を教えてもらった。ありがとうございました!

矢野健一さん

鮎の友釣りが大好きで、子どものころから川で遊びつくしてきた矢野さん。教えてくれたのは、「モロコ」「ヒブナ」だった。

矢野さんから教えてもらった情報

最近見なくなった魚:モロコ、ヒブナ

特徴:体長7~8㎝で小さくウグイを小さくしたようなもの、金魚の原種と呼ばれるような赤いフナ

場所:池、緩く深い河川

なぜいなくなった?:外来種に食べられた?、もともと少なくて目立つから外敵に食べられた?

岡田さんの時と同様に本やネットで調べるとモロコは「モツゴ」、ヒブナはそのまま「ヒブナ」が正式名称だと断定した。直接川に行き、時間いっぱいまで近くを探したが、それらしいものは見つからず。出水もあり、あまり魚も見えず、川遊びとなりました。

9月1日 セカギを探して

9月1日。セカギを探しに長沢川へ。長沢川は増水で調査できず、支流の白井川へ入った。いつもはちょろちょろの小川が、やはり増水で「川」に変化していた。長沢川合流部から上流へ向かいながら魚を探す。ハヤンボやサワガニはたくさんいたが、肝心のセカギがいるような石の下は流れが速く調査が難しい。下流に網を構えて、岩をどかしながら捕獲しようとすれども、何も入らない。岡田さん曰く、「岩になり切っているから、いれば動かずじっとしているので獲りやすい。」今日の結果は、ヨシノボリ、サワガニ、ハヤンボが獲れて終了~。残念!

10月4日 モロコを探して

10月4日。モロコを探してこいのぼり公園の池へ。方法は釣り。モロコは小さいので、小指よりも小さい針を使う。針にテグスを巻き付けるところから始めたが苦戦。細いミミズを小さく切ってつけ池へ。魚はたくさん見えるがほとんどブラックバスやブルーギルだった。ハヤンボやフナ、ベニトンボがいて豊かな自然環境を感じた。入れ食いだったが、お目当てのモロコ(モツゴ)らしきものは釣れなかった。それらしき姿も見えなかった。

10月21日 なぜ幻の魚になったのか・・・

10月21日。これまでやってきたことを受けて、なぜ幻の魚になったのかを一緒に考えた。もちろん、この調査だけで「いない」とは言い切れない。

中学生の推理

セカギ

・気候変動

・人間が出す汚れで河口近くにある産卵場がダメになった

・環境が悪化した

モロコ

・人間が入れた外来種に食べられた

自分たちが幻の魚のためにできることは?

・少しでも川がきれいになるように生活排水を流さない。

・川にゴミを捨てない。プラスチックや魚が消化できないゴミを捨てない。

・今の川を保つ。

・一番きれいな川の真似をする。

「環境が悪くなった」というが、昔の環境を知らない中学生たちにはそれが本当かどうかわからない。そこで、高知県が調査している過去のBODデータを見てもらった。実は、水質はそんなに昔と変わらず、むしろ良くなっている。それでは、何が魚たちを追いやったのだろう。今すぐにはわからないからそれぞれ考えてみようということになった。

「川が好きだから少しでもキレイにしたいけど、魚たちを探し出すのはいないから無理です。」

「外来種を獲って楽しむ人たちがいるからおっても良いと思う。釣って楽しむ人それぞれ。」

率直な意見にドキッとした。それはそうだと思った。川が好きな子どもに魚がいなくなった川を見せている。それは、今までの人がしてきたこと結果かもしれない。生物は一度いなくなると戻らない。今回の幻の魚だけでなく、今いるハヤンボにも同じことが言えるのではないか。

ブラックバスやブルーギルといった外来種を入れたのは人間で、楽しむためという人間の身勝手さもあるが、視点を変えたら決して悪いことでもないのかもしれない。外来魚も含めた魚たちが一番の被害者なのに、人が勝手に滑稽なことをしているのかもしれない。

これから中学生は、文化祭の発表に向けてまとめを行う。文化祭で中学生がどんな発表をしてくれるのか楽しみだ。