・はじめに
四万十川財団の仕事は流域の人、四万十川を愛する人が四万十川にかかわる問題を考え、議論する場であることだと考えています。したがって、推進、反対のどちらか一方の立場に肩入れするということは職務上できません。事業者のORIXさんとも話をしていますし、反対の立場で活動される方にも協力します。私たちにできることは、できる限り情報を提供し、皆さんが判断する材料を提供することです。

四万十川のこれからと自分たちの暮らしに関わることです。
ぜひご意見、情報をお寄せください。

大藤風力発電所の模型

四万十町日野地の陶芸家、武吉廣和さんが現在四万十町と四万十市境の尾根筋で計画されている大藤発電所の模型を作って持ってきてくれました。こうしてみると、そのスケール感がよくわかります。

化石エネルギーから再生可能エネルギーへの転換が必要とされる中、大切なのは、まずきちんと学ぶことだとおもいます。自分たちの住む地域と暮らしがこれからどうなっていくのかをきちんとみんなで学びましょう。知らなければ、考えることも検討することもできません。 その意味で、事業を計画しているORIXさんには、もっと情報の開示をおねがいしたいと思います。

賛成、反対は、どちらにしてもそれからです。

↑2026年稼働予定の奧四万十オリックス大藤風力発電計画の1/25,000地図模型です。四万十町との境界稜線上に立ちますので下の南側が四万十市側です。赤丸が最大出力3000キロワットで高さ120mの風車です。これが一の又山塊に49基立つ予定、黄線の範囲が工事実施予定区域。稜線工事の総延長が18Kmです。

この模型は、四万十町日野地の武吉さんのお宅に行けば見せてもらえます。
武吉さんは風車建設反対のお立場からブログも書いておいでです。
陶芸家武吉廣和のブログ(https://ameblo.jp/okusimanto-ryuuyou/

武吉さんは、風車でまず気にかけなければいけないのが低周波で、それは15キロまでは減衰しないんだということを力説なさっていました。低周波が人体に及ぼす影響については、 フィンランドの環境医学協会(Finnish Association for Environmental Health)が研究報告書を出していて、それが (Suomen ympäristöterveys – SYTe ry) で読めます。

原文はフィンランド語ですが、それを英訳したページを四万十町の西原真衣さんが日本語訳してくれたので転載します。

家が安住の地ではなくなった人々

 フィンランドの研究によって、風車から発する低周波音は、風車から15km以内に住む人々にとって安全とは言えないことが分かった。2019年2月:Stop TheseThingsより
 
フィンランド人は我慢強いという定評がある。しかし、風車から出る軋り、脈動する騒音は、感覚器を備えた生命体にとっては実に耐えがたい代物である。フィンランド人もこの例外ではない。 
 巨大な産業用発電設備である風車群から発生する騒音は、近隣住民に避けられない健康被害を例外なくもたらすという証拠が、これまでに収集されている。
 ドイツのマックスプランク研究所は、可聴領域にない低周波が、ストレスや睡眠障害やその他の不定愁訴の原因となることを確定している(ここを参照)。さらにスエーデンの団体が、産業用風車群の近くで居住することを余儀なくされた人々に睡眠障害が引き起こされるのは、風車群から発する低周波音の振幅変動(amplitude modulation)という性質に起因することを示している(ここを参照)。 

注:マックス・プランク研究所は、マックス・プランク学術振興協会が運営する、ドイツを代表とする世界トップクラスの学術研究機関であり、前身のカイザー・ヴィルヘルム協会時代も含めて33人のノーベル賞受賞者を輩出する。アインシュタインの実験室もこの研究所内にあり、量子力学の基礎が作られた。

(ウキペデイアより)
 巨大な産業用風車群は、居住地から数千メートル離せば、設置が当局から容認されるという慣例を嘲笑うかのように、フィンランドの調査結果は、風車群から15kmの距離まで離れなければ、公衆衛生上の安全性は担保できないことを示している。
 最新の調査は、風車群から15km以内の距離に住む人々にとって、風車群から発生する低周波音に起因する健康被害の有意な低減は期待できないということを示している。 
 フィンランド環境医学協会-SYTe ry Suomen ymparistoeterveys 2019年1月10日 
 フィンランドのSatakuntaとOstrobothnia北部で実施された最新の調査によれば、風車群から発生する低周波音に起因する健康被害は、風車群から15km離れなければ有意に低減しないことが分かった。この調査は、2016年春にフィンランド環境医学協会(SYT)が実施した。 

「風力発電所の建設後、通常2、3か月後に近隣住民は、不定愁訴に悩まされ始めることが、経験的に知られている。」

―フィンランド環境医学協会(SYTe)代表Marku Mehtatalo氏談

「この疫学調査は非常にシンプルなものであり、公衆衛生に責任を負うフィンランド政府の当局であるフィンランド健康福祉部(THL)も、この種の疫学調査を実施してきた。しかしながら、THLが実施した2016年の調査は、風車群の近隣では症状は見られるが、風車群から10kmで症状の発言は有意に減少するという仮説に立っていた。さらに周辺の全ての風車群からの影響を勘案できていなかった。」「だが、人々が訴える不定愁訴は、この距離では通常減衰しないということが経験的に知られている。」「現在建設されている風力発電設備から発生する低周波は、この距離では有意に減衰することはないことが、既に測定されている。さらに風車に非常に近接していれば、騒音や電磁波等の別の有害事象という危険性もある。」

―Mehtatalo氏談
聞き取りは、SatakuntaとOstrobothnia北部で実施された。最新の調査は、統計分析に対応できるよう設計された。聞き取りに先立つこと、風力発電設備稼働開始から6ケ月乃至1年6ケ月が経過しているSatakuntaOstrobothnia北部で主に聞取り調査が実施された。
図1:黄色の線で囲まれた区域では、低周波に始終暴露されている。フィンランドOulu州に位置している。(Ostrobothnia北部の一部地域)
 調査対象は、各構成員に症状が発現している50家族についてであった。それで総数としては、約200人が調査対象となった。
 さらにこの最新の調査は、他から切り離された立地条件を持つ単独の風車群の影響より大きな影響を及ぼし、影響範囲もより広いという予見に基づき、フィンランドに設置されている全ての風車群の位置関係を計算に入れた。 

低周波音の典型的な有害事象は、夜間の睡眠障害である。

 聞き取り対象となった家族に対しては、まず、ここ6ケ月から1年以内に健康面での変化を感じているかと聞いた。最も近い風力発電設備の稼働時期に合わせて変化を感知した時期を設定した。聞き取り対象者には、健康面の変化と風車群との関連性については事前に何も知らせていなかった。

「聞き取りに応じた人の殆どは、自分の健康面の全容を言葉にするのが困難であった。けれども彼らの多くは、各々の症状があるか、と聞けば、あると応じた。」

―Mehfatalo氏談
最も典型的な症状は、睡眠障害と夜間の睡眠への要求の変化であった。それらの健康面の変化を風車群と関連付けて考えている人は、殆どいなかった。

風車群の近隣住民では、有害で深刻な症状の発現は3倍にも昇った。

  症状を軽重の程度で区分し、統計的に分析した。風車群の近く(15km以内)は、遠く(15kmより外側)の3倍も症状の有害度と重症度が高かった(図2参照)。
図2:絶え間ないか、頻繁で執拗な低周波音に暴露している住民に発現している症候群: 風車群から15km圏内と圏外
上図の下左から
Almost continuous:ほとんど絶え間ない低周波への暴露
Rarely:低周波への暴露はまずない

図の右横上から
No new symptom: 新たな症状の発現なし
Mild:どちらかと言えば不調感がある
Adverse:不調感がある
Reducing work ability:仕事が思うようにはかどらない
Serious health condition:体調が非常に悪い

「風車群建設後に、近隣住民の大多数に、風車群建設に付随する症状が発現している。最も多い症状は、典型的なストレス症候群であるということを分析結果は明らかに示している。」

―Mehfatalo氏談
特に風車群が視界にあったり、若しくは風車の低周波が健康被害を引き起こす可能性についての予備知識を持っていれば、症状の原因が風車にあると疑う人も現れるだろうが、聞き取り対象となった人達は、(風車への先入観から来る)「気のせい」とは無関係にこれらの症状を発現させていた。この最新の調査は、これらの症状が「気のせい」ではないことを示している。 これらの症状は、風力発電所から15km~20km離れると有意に減少する(図2参照)。別の方角に風車群があり、その区域に滞在することが多ければ、症状が発現する危険性は高くなる。 

低周波音によって発生する健康被害の想定圏域は狭過ぎる。

「2017年後半に実施された、フィンランドでの別の地域における低周波音の測定結果によれば、低周波音の振動波は、どんな環境下においても15km~20kmは優に到達可能であると分かった。(1-4)。アメリカでの調査結果には、条件さえ良ければ、低周波音は、発生源である風車群から90kmの距離まで届く、というものさえある[5]。」  

-Mehfatalo氏談
 この最新の調査が表しているのは、40万人のフィンランド人が風力発電に起因する症状を発現させており、その中の1万人が、風車と症状を関連付けて捉えているという事である。データ量がまだまだ希少であるので、結論付けるには注意が必要である。
 しかしながら、過去の全ての研究結果においても、有害事象の発現する距離とされてきた従来の圏域が狭過ぎるということは、明らかになっている。中でも、複数の本の中にも引用されている、アメリカで実施された、より広域で詳細な調査がある。この調査においては、風力発電設備から半径11.7kmの圏域で、データが収集された。結論としては、「この圏内では、症状に特段の変化は見られず、従って健康面での有害な影響は発見されなかった。」とされている。 
注釈:11.7k圏内では、15km圏外との比較調査がなされていないので、有意な症状の発現率の差異が発見されなかったという事ではないか。例えば一般的に、試薬の有効性を確認するための臨床検査は、必ずプラセボ(偽薬)群を用意する。いわゆる風車病の疫学調査であるからには、同様に圏内と圏外の有害事象発生率を見る必要があるのではないか。圏域の設定に問題があるという指摘ではないか。(西原)

上記訳文の英語原文のページも貼っておきます

Pilot Study SYTe 2016 – English translation (pdf-file)

誤解のないように追記しますが、私たちは上記に基づいて低周波による被害が存在すると主張しているわけではありません。環境省は「低周波音問題に関するQ&A」のページで以下のような公式見解を出しています。

Q10 風力発電から、低周波音が出て健康や生活環境に影響があると聞きましたが本当ですか?

A10 風力発電施設から発生する音には低周波音も含まれますが、他の環境騒音(交通騒音等)と比べて特に大きいわけではありません。風力発電施設から発生する音と健康影響の関係については、国内外で様々な研究が進められていますが、風力発電施設から発生する超低周波音・低周波音(※)と健康影響について、現段階において、明らかな関連を示す知見は確認できませんでした。  環境省では、平成25年度から「風力発電施設から発生する騒音等の評価手法に関する検討会」を設置し、平成28年11月に検討会報告書「風力発電施設から発生する騒音等への対応について」が取りまとめられました。  

検討会報告書では、これまでの国内外で得られた研究結果を整理しています(詳細は検討会報告書を参照ください。)。  まず、日本の風力発電施設から発生する音の実測調査の結果、風力発電施設から発生する超低周波音は、音圧レベルがそれほど高くなく、人間の知覚閾値以下であることがわかりました。また、他の環境騒音を比較した結果、風力発電施設から発生する音は、低周波数領域で卓越があるわけではありませんでした。  

 また、国内外の風車騒音と人への健康影響について、過去の研究を広く整理し専門家による審査を経て医学会誌等に掲載されたレビュー論文や、各国政府による報告書等を整理したところ、風力発電施設から発生する超低周波音・低周波音と健康影響については、明らかな関連を示す知見は確認できませんでした。  

 ただし、検討会報告書では、一般的な騒音の問題として、生活環境を保全する観点から騒音の評価の目安を定めるべきとされ、その後環境省により指針が定められています(Q11を参照ください)。 ※ 低周波音というのは、一般に100Hz以下の周波数の音を指します。その中でも20Hzを下回るものは、超低周波音と呼ばれ、通常人間には聞こえません。超低周波音は音圧レベルが高くなると、圧迫感等を感じさせる場合があることが知られています。

(参考)風力発電施設から発生する騒音等の評価手法に関する検討会

環境省「低周波音問題に関するQ&A」より

つまり、国としては調査もし、専門家の審査を経て医学会誌等に掲載されたレビュー論文や各国政府による報告書等を整理し検討したけれども、風力発電施設から発生する超低周波音・低周波音と健康影響については、明らかな関連を示す知見は確認できなかった、ということです。

現代社会において化石燃料から自然エネルギーへの転換が急務とされる中で、地方に住む人も都市に住む人も、自分自身の問題としてエネルギー問題をとらえていく必要があります。その中で、ORIXさんから提示された一つの解決案に対して、我々住民もしっかりと学びながら考えていくべきだと考えています。