皆さんは「棚田(たなだ)」と聞いて、どんな風景を思い浮かべますか?山の斜面に階段状に広がる美しい田んぼは、まさに日本の原風景。しかし今、過疎化や高齢化によってその貴重な景色が失われつつあります。

今回は、兵庫県市川町で開催された「棚田×生物多様性×企業連携を考える 棚田LOVERS 活動報告・交流フォーラム」に参加したレポートをお届けします!現地(兵庫県市川町)とオンラインのハイブリッドで開催された熱気あふれるイベントでした。

NPO法人「棚田LOVERS」とは?活動20年目の大きな節目

兵庫県神崎郡市川町を拠点に活動するNPO法人「棚田LOVERS」。 「棚田を愛し、棚田を育む。未来の子どもたちのために」をコンセプトに、農薬や化学肥料を使わないお米作りや、子どもたちへの食育、自然体験活動などを20年にわたって続けている団体です。その地道で素晴らしい活動が高く評価され、環境省主催の「第13回グッドライフアワード」において環境大臣賞優秀賞を受賞、さらには農林水産大臣賞や地域づくり活動賞など、数々の名誉ある賞を受賞されています。今回のフォーラムは、その受賞記念と20年目の活動報告を兼ねて開催されました。

人の手が入ることで守られる「生物多様性」

フォーラムには、有識者から企業担当者まで多彩なゲストが登壇しました。中でもハッとさせられたのが、兵庫県立大学・中瀬先生(元 人と自然の博物館 館長)のお話です。

私たちはつい「自然保護=人の手を一切入れないこと」と思いがちですが、棚田や里山は少し違います。農業を営み、定期的に草刈りをし、水路を管理するという「人の継続的な営み」があるからこそ、リンドウなどの可憐な野草が育ち、美しい景観と多様な生態系が維持されるのだそうです。

中瀬先生は、景色をただ見て帰るだけでなく、棚田に出向いて共に汗を流して作業に参加することこそが「これからの新しい観光の形」になると語られていました。

中瀬先生

実際に、水生生物愛好家の小西さんの調査によると、市川町の棚田やため池にはアカハライモリやモリアオガエルといった希少な生き物や、180種類以上の植物が生息しているとのこと。棚田がいかに「命豊かな場所」であるかが分かります。

企業との連携・科学的アプローチで見える化する「棚田の価値」

今回のテーマのもう一つの柱が「企業連携」です。自然保護活動を長く続けるには、NPO単独の力だけでなく、多様なセクターとの協働が欠かせません。イベントでは各企業のユニークな視点や支援の形が紹介されました。

  • 株式会社シンクネイチャー
    データテクノロジーを用いて生物多様性の価値を科学的に分析。「農薬不使用の栽培により、生物の個体数が30〜50%増加する」というデータを提示し、感覚的な「環境に良い」を数値で見える化するアプローチに驚かされました。
  • キヤノンマーケティングジャパン株式会社
    インクカートリッジの回収を通じた寄付プログラムや、NPOと連携した「自然共生サイト」の支援など、本業の枠を超えた具体的な社会貢献活動をご紹介いただきました。
  • 富士通株式会社
    社員のスキルを活かした「プロボノ活動(専門知識を活かしたボランティア)」として、棚田LOVERSのSNS発信の効率化やホームページの改修支援など、デジタルの側面から活動を力強く後押しされています。
  • デロイトトーマツグループ
    公認会計士の視点から、無限に増え続ける「お金」と、限りある「自然資本・時間」を比較。アリの社会と人間組織を対比させるなど、経済と自然の摂理を結びつける斬新なお話が印象的でした。

他にも、環境省の近畿環境パートナーシップオフィス(エコネット近畿)による中間支援の仕組みや、棚田学会・安井さんからの地球規模の環境課題から見た棚田の意義など、多種多様なプロフェッショナルによる熱いセッションが行われました。

私たちにできる第一歩

「棚田LOVERS」のフォーラムに参加して強く感じたのは、自然を守る活動は、決して専門家や地元の人たちだけのものではないということです。 企業はそれぞれのテクノロジーや資金、スキルを提供してサポートし、私たち一般の参加者も「棚田応援団(タナーズ)」としてイベントや農作業に楽しく参加することで、確かな貢献ができます。

棚田LOVERSでは、春の田植えや秋の稲刈り、食育イベントなどを定期的に開催しています。自然に触れ、泥んこになって笑い合い、おいしい無農薬のお米をいただきながら、心と体を癒やす休日を過ごしてみませんか?

ご興味を持たれた方は、ぜひ「棚田LOVERS」の公式ホームページをチェックして、市川町の美しい里山へ足を運んでみてくださいね!