
「自分は酒は飲めないけど、みんながただワイワイ言うて楽しそうにしている姿を見るのが好き」
そう話すのは、四万十川感謝祭実行委員会の会長を務める山崎さんです。
四万十川の恵みに感謝し、川漁師の技や文化を次世代へ伝えようと、四万十市で開催されている「四万十川感謝祭」。今年で3回目を迎えました。
このお祭りの原点は、川漁師たちが行ってきた「鮎供養」です。鮎の漁期が終わる頃、川原に集まって鮎に感謝をささげながら、一献傾ける。そんな川漁師ならではの風習が、今では子どもから大人まで楽しめるお祭りへと発展しました。
■ 川の恵みを囲んで、仲間の結束を深める
6月には、四万十川感謝祭の実行委員と当日スタッフが集まり、決起集会が開かれました。



食卓に並んだのは、川漁師たちが用意した天然アユや天然ウナギ、テナガエビ、ゴリ、スジアオノリを使ったお餅など、四万十川の恵みが詰まったごちそうの数々。おいしい料理を囲んで会話も弾み、お腹も心も大満足! 和やかな交流を通じて、スタッフ同士の結束も自然と深まっていきました。
生川さん「四万十川感謝祭はキャンプサイトと河原全体が会場になるため、当日はスタッフ同士でも顔を合わせないことがあります。だからこそ、事前に顔を合わせてつながる時間を大切にしています。川漁師だけではできないことを、たくさんの仲間たちが支えてくれていることに改めて感謝です!」
そう語るのは、実行委員会の事務局業務を一手に引き受け、感謝祭を陰で支える生川さんです。川漁師だけでなく、さまざまな立場の人たちが力を持ち寄ってつくり上げる感謝祭。こうした顔の見える関係づくりも、お祭りを成功させるための大切な準備の一つなのです。
■ 漁の合間を縫って奔走! 資金集めも自分たちの手で
華やかな感謝祭の舞台裏では、川漁師たちの地道な努力が続いています。企画から運営まで自分たちで担うため、打ち合わせや準備はすべて手弁当。本業の漁の合間を縫って、ポスターを貼りに回り、会場の草刈りをし、当日に使う機材を手配するなど、やるべきことは山積みです。
なかでも大きな苦労の一つが、開催資金の確保です。川漁師たちは自ら地元企業を訪ねて寄付をお願いし、補助金の申請にも取り組みます。限られた時間と資金のなかで、互いに知恵を出し合いながら、何とかお祭りを実現させようと奮闘しています。

川で魚を捕ることを生業とする人たちが、なぜ、これほどの時間と労力をかけてお祭りを開くのか。その根底にあるのは、四万十川への愛着と、川の楽しさや漁師の文化を次の世代へ伝えたいという強い思いなのでしょう。そんな川漁師たちの姿を間近で見ていると、頭が下がると同時に、こちらまで応援する気持ちが湧いてきます。
■ 川漁師の知恵が生んだ巨大な生け簀
感謝祭では、投網や火振り漁、アユのつかみ取り、ウナギのコロバシづくりなど、全部で12種類の体験プログラムが用意されました。










その中でも、参加者やスタッフから特に大きな反響があったのが「アユのつかみ取り」です。しかし、この企画、簡単に実現したわけではありません。
アユを泳がせるために必要なのは、河原に設置する直径約10メートルもの巨大な生け簀。当然、そんな大きな生け簀は市販されていません。そこで、川漁師たちの知恵と経験の見せどころです。
(網を縫い合わせている写真)
長さ12メートル、幅2メートルの農業用ネットを6枚縫い合わせて、なんと12メートル四方の巨大な網を手づくり!川漁師たちは、普段から投網や投げ網を自分でつくったり、傷んだ網を修理したりと、網仕事はお手のもの。そんな日頃から培ってきた技術と経験が、今回の巨大な生け簀づくりにも存分に発揮されました。まさに、川漁師たちだからこそできた手づくりの生け簀です。さらに塩ビパイプをつなぎ合わせて骨組みをつくり、そこに網を掛けることで、生け簀を完成させました。

そして迎えた当日。生け簀の中をアユが元気に泳いでいる姿や子ども達が楽しそうにアユを掴む様子を見たとき、

「準備は凄く大変だったが子供から大人まで楽しんでくれていたことが凄く嬉しかった!」
と山崎さんは言います。川のことをよく知り、身近な道具を工夫して使いこなす。そんな川漁師たちの知恵があったからこそ、実現できた体験でした。


参加者からは「大きな鮎にびっくりしました」「子供たちが体験できてすごく楽しそうで良かったです!」といった声が寄せられました。さらに、「あまり川魚がすきではなかったのに、鮎掴み取りで捕まえた鮎が美味しくて、大好物になった様です」という、うれしい感想も。
アユを追いかけ、つかまえ、その命をいただく。子どもたちにとって、川の恵みを体いっぱいで感じる特別な経験になったようです。
■ 「楽しかった!」が文化をつなぐ
今回の参加者アンケートでは、総合満足度は5点満点で平均4.57点。来年も参加したいかという問いには、回答者全員が「参加したい」と答えました。また、次回やってみたい企画として「川漁師一日体験」「投げ網漁を目の前で見てみたい」「魚の取り方、コツや工夫の仕方を教えて欲しい」などの希望も寄せられました。
単に川で遊ぶだけでなく、川漁師の技や知恵をもっと知りたいという関心が生まれていることは、感謝祭が目指す文化継承にとって、大きな成果といえるでしょう。
■ 「四万十川で一番大きなお祭りにしたい!」
感謝祭は、川漁師を中心に、リバーアクティビティ施設や役場、観光協会、地域住民など、30名以上の関係者が協力してつくり上げています。もちろん、これだけ多くの人が関わるお祭りですから、準備や運営は簡単ではありません。実行委員会の反省会でも、会場案内やスタッフ間の連携、プログラムの運営など、さまざまな課題が挙げられました。
それでも、みんなで知恵を出し合い、できることを持ち寄りながら、少しずつお祭りを育てています。山崎さんは、感謝祭のこれからについて、こんな夢を語ってくれました。

「この感謝祭を四万十川で一番大きなお祭りにしたい!」
川漁師の奮闘で、子どもたちが川で遊び、地域の人たちが集まって笑い合う。その輪が大きくなることは、川の文化を未来へつなぐことにもなるはずです。豊かな自然があるだけでなく、人が集い、川の恵みを楽しみ、文化が受け継がれていく。そんな四万十川の未来を、川漁師たちは楽しみながらつくろうとしています。
