田植えの季節になってまいりました!田植え前には、田んぼを平らにするための「代掻き」が必要です。その代掻きで問題になっているのが、発生する濁水が河川に流れ出して濁ってしまう事。ちょうど、ゴールデンウイークとも重なるので、四万十川が泥濁りなのは観光的に良くありません。そこで、高知県、四万十町が愛媛県とも情報交換しながら行っているのが、土壌改良剤「俺のカルシウム」を用いた実証実験です。

「俺のカルシウム」はどういった資材なのでしょうか。メーカーは吉野石膏さん。なので原料も石膏(硫酸カルシウム)になります。酸化カルシウム(CaO)28%、硫黄(S)16%、ホウ素(B)0.1%が配合されているようです。Phは6前後のほぼ中性。ホウ素が配合されている事で、水に溶けやすく作物にも吸収されやすいそうです。

どういったメカニズムで濁水が軽減されるのか。水中に浮遊する泥の粒子はマイナスイオンを帯びています。一方の「俺のカルシウム」はプラスイオンを帯びています。なので、「俺のカルシウム」が泥粒子を吸着、沈下させる事で濁水を軽減するようです。

さて、今回は、この「俺のカルシウム」を散布した実証区と散布しない対照区を比較し、「俺のカルシウム」の効果を検証します。

散布中
田んぼの中はこんな感じです
散布が終われば、代掻きです。
写真は令和5年度の実証実験結果の一例:(左)実証区(右)対照区

実証結果

代掻き後は、実証区も対照区も同じように泥濁りしています(写真が無くてすみません!)。これがどのように変化していくのか、24時間毎に3日間、水を採取・比較します。さてさて、どうなるのか。こんな感じです。

「24時間後」の違いが一番はっきりしているでしょうか。その後、対照区も「代掻き前」の透明度に近づいているように見えます。

「俺のカルシウム」 増収にも効果あり!

資材提供や説明に来られた吉野石膏さん

このように「俺のカルシウム」に濁水を軽減させる効果はあると考えられますが、課題もあります。農家側からしてみれば、濁水軽減のためだけに手間も費用もかかり過ぎ、という意見があります。そこで今回、吉野石膏さんから「俺のカルシウム」を散布する事で、濁水軽減以外にもどんな効果があるのか説明していただきました。

今回のように代掻き前に全面散布する事で、硫黄欠乏対策になるそうです。硫黄が欠乏すると、「分けつ」が抑制され、減収につながります。田植え後に葉が黄色になるような田んぼは、硫黄が足りない可能性があり、そのような田んぼでは濁水軽減に加えて増収も期待できるそうです。少し見づらいですが、下の写真のように、左(対照区)と右(実証区)で、はっきりと「分けつ」の進み具合や葉色に違いが現れています。

協力農家さんの意見

こういった実証実験には、資材を提供してくださるメーカーさんや、圃場と労力を提供してくださる農家さんが必要不可欠です。下の写真は、今回の実証実験に圃場を提供してくださった宮内集落の掛水誠幸さんがインタビューに応える様子です。

掛水さんはこれまでも、浅水代搔きをし、排水するときは濁りが落ち着くまで待ったり、町が提供している止水板も積極的に使ってきたそうです。県の取り組みには理解を示しながらも「資材を詰めた散布機は45キロほどの重量があり、背負うのも重労働。行政の支援がなければ資材散布は難しい。」といいます。

今回の実証事件の圃場を提供してくださった宮内集落の掛水誠幸さん

まとめ

このGW中にも濁水が四万十川に流れ込む様子を何度か見かけました。もしかしたら、農業排水だけでなく、土砂災害や山林から流出している可能性もあるかもしれません。

こうした問題は、私達、流域に暮らす人々の無関心が一番の敵だと感じます。今後も注視していきたいと思います。