芝 陽一(しば よういち)

芝 陽一さんの基本情報
・四万十町十和地区出身
・『芝 あめご屋』の主人
・林業歴50年
・昭和26年生まれ
芝さんってどんな人? ~弘子さんとの出会い~
芝 陽一さん(73)は、四万十町(旧十和村)久保川口のご出身。陽一さんはもともと50年以上林業に従事していた。妻・弘子さんも「山仕事に関しては褒める!」と太鼓判。100日かかるような仕事を仲間達と効率よく80日で仕上げ、浮かせたお金を、仲間で平等に分配。陽一さんは、それをほとんど副業のアメゴ養殖につぎ込んだ。その詳しい話は7月号の清流通信でご紹介しますのでお楽しみに。
まずは「アメゴに惚れて、引っ掛かった!」と笑う弘子さんとの出会いについて。神戸生まれの弘子さん。20代半ばの時に、十和地区に農業体験に来ていた。その際、紹介で陽一さんと出会う。当時40代だった陽一さんの印象は、「山仕事をバリバリやって、ガッツがあってええなあ」というもの。
この日、取材に同席していた、長女・美咲さんが面白いエピソードを教えてくれた。
美咲さん「お母さんと出会うまではフンドシでしたからね!」
陽一さんにどうしてフンドシなのか聞いてみると「気が引き締まる。山仕事でも怯みそうな場面があって、そんな時にフンドシを締めていると逃げちゃいかん!という気持ちになる。」とのこと。陽一さんのガッツの源はフンドシによって培われたものかもしれない。皆さん、ここ一番の時にはフンドシでいきましょう!
かたや弘子さんは「フンドシしちょったら結婚してなかった!」と笑う。40代になっても独身だった陽一さんを見かねて、実のお姉さんが「陽一、もうやめてくれんか。フンドシやったら絶対、嫁さんは来んぞ!」と適切なアドバイス。フンドシを卒業した後に弘子さんと出会い、めでたく結婚。
弘子さんと美咲さんに陽一さんのいい所をお聞きすると「頭とお尻」と答えてくれた。うむ、「頭」については心当たりがある。以前、十和のこいのぼりの川渡しを取材した一人が陽一さんだった。写真を撮らせてもらう際に「ちょっと待ってよ!」と言って、わざわざ帽子をパカッと取って、嬉しそうに見事な「頭」を披露していただいた。こちらがその時の写真。

お二人によると「お尻もプリプリ」らしい。弘子さん、そこですかさず
「 長所はもう “ 尻弾力(けつだんりょく) がある ” でええやん! 」
座布団10枚!さすが関西出身。
このお尻でハードな山仕事をこなし、さらに趣味がマラソンというから驚く。マラソン歴はおよそ30年。四万十川ウルトラマラソンでは100kmコースを6回完走したそうだ。現在は膝を痛めてしまってマラソンはしていないが、そのDNAは長男の陽盛さんに受け継がれ、陽盛さんは高校3年生のときに龍馬マラソンで2位になったそうなので相当なものだ。
水を見守って40年 その変化とは?
少し真面目な話もしておこう。陽一さんの専門は、昔から行われている架線集材。山の中にワイヤーロープを張って、伐採した木を吊るし、集材機で巻き上げながら集積場まで運ぶ集材方法だ。昨今は、効率性や採算面から林内に作業道を張り巡らせて集材を行う路網集材が多くなっている。こうした集材方法の変化の中で陽一さんには懸念している事がある。
陽一さん「昔の林業はワイヤーで木材を吊り上げて運ぶ架線集材やったけど、今は作業道を張り巡らせちょうがよね。そのせいやと思うけど、昔に比べると雨が降ると泥水が流れて来やすくなったね。それが気になっちょうね。」
40年間毎日、養殖場の水を観察しつづけている陽一さんの感覚では、15年前くらいから作業道による搬出が増え、それに伴って雨が降った後に川が濁りやすくなったという。弘子さんも「ワイヤー(架線集材)の方が川も汚れんでええんやけど。」とおっしゃる。
美咲さんも「昔は飛び込みが出来るくらい深かった所が現在は砂利がいっぱいで浅くなってしまった。」と川の変化に気づいている。美咲さんも小さい頃から川に親しんでいる一人なのだ。アメゴの養殖場にも陽一さんに連れられてよく来ていたそうだ。小学生の時には、学校の帰りがけにカンタロウを捕まえ、ちぎって延縄のエサにしてウナギを獲ったというから何とも逞しい。
取材を終えて…
パワフルで、陽気で、サービス精神の塊のような陽一さん。いろんな場面で大活躍されている。十和は、こいのぼりの川渡しの発祥の地であるが、陽一さんは川渡し歴47年目の大ベテラン。林業で培われた架線集材の知識を活かして、こいのぼりを渡すためのワイヤーを張る中心メンバーになっている。
以前のインタビューでは「これまでいろんなピンチがあったけど、みんなで協力して乗り越えてきた。見に来てもらった人たちに『来てよかったー』と感動を与えることができれば最高だ。」と応えてくれている。
今回、取材をお願いするのと併せて、四万十リバーマスターにも加わっていただいた。心強い限りだ!今後ともよろしくお願いします!