いつも清流通信をご愛読いただきありがとうございます。今年は岐阜県と並んで全国で1番早くソメイヨシノの開花宣言があった高知県。四万十も暖かな春の陽気に包まれ、川沿いの桜が満開になるのを今か今かと心待ちにしているところです。温かくなるとお出かけの機会も増えてくると思いますが、そんな時期にお客さんを呼び込もうと開催されているイベントがあります。今回は、四万十町の大正地域で行われている「大正のきさきマルシェ」をご紹介します。

大正のきさきマルシェとは?

大正のきさきマルシェ

 「大正のきさきマルシェ」とは、大正の商店街で開催されるマルシェイベントだ。毎年観光シーズンが本格化する前の3月末~4月半ばに行われ、土佐大正駅から大正地域振興局までの400mほどの間に、町内外から集まった約30店舗が出店する。当財団が事務局を務める「四万十川すみずみツーリズム連絡会」も毎年出店しており、会員さんの商品を販売したり、活動のPRをさせていただいたりしている。会場は旧大正町の中心部で、かつては人通りも多い賑やかな商店街だったが、今では空き店舗が目立つ少し寂しい通りになってしまっている。そんな状況を何とかしたいと出店者を募り、空き家や空き地を利用して1日限りの商店街を復活させようと始まったのが「大正のきさきマルシェ」なのだ。

大正の商店街を賑やかに

仕掛け人の小野雄介さん

 イベントの仕掛け人は、大正でゲストハウスEKIMAE HOUSE SAMARUを営む小野雄介さん。小野さんは、四万十町の元地域おこし協力隊で、大正打井川地区を担当していた。任期終了後、駅前にゲストハウスをオープンして大正の地域づくりに関わりながら、宿を拠点に地域の魅力を伝えている。

「もともと、商店街の空き家や空き地を使って何かやりたいとはずっと思っていました。また、大正にはお店も少ないので、いろんなお店が集まるショッピングモールのようなイベントができたら地元の人も喜んでくれるのでは、とも思っていたんです。そんな時に、四万十町の地域おこし協力隊が企画した『シマコン』というまちづくりのアイデアを出し合うワークショップがあって、そこで“大正でマルシェをやってみたい”と提案してみると、みんながやってみようと言ってくれて。それが始まったきっかけです。以前にも土佐大正駅の駅舎で『おかしなまつり』という町内のお菓子を販売するイベントを開催したこともあって、それがとても好評だったので、今度は少し規模を大きくして、商店街を舞台にマルシェをしてみようと思ったんです。空き家を長期間貸すとなると所有者のハードルも高いですが、1日だけだったら貸してくれるのではないかと思い相談してみたところ、ありがたいことに、快くOKしてくださる方も多くて。イベントをきっかけに使われていない空き家を活用すれば、空き家を利用してみようという雰囲気が地域に生まれ、何か化学反応が起きるのではないかと思ってやり始めました。」

 人口減少に伴い、空き家も増えて少しずつ寂しくなっていく町の元気を取り戻したい。イベントの開催には、小野さんの大正への想いが込められている。だからこそ、のきさきマルシェだけでなく、地元の神社の夏祭りと併せて開催している「神JAZZ」、大晦日に年越しそばをふるまう企画など、年間を通じて地域を盛り上げるためのイベントを開催してきた。地域を元気に、地域の人に喜んでもらえるように。それが、協力隊時代からまちづくりに携わり続けてきた小野さんの原動力になっている。

「地域の人に喜んでもらうことが、イベントをする最大の目的です。観光客に楽しんでもらうことも大事ですが、まず企画するときに考えるのは地元の人。大正にはお店が少なく、おしゃれなお店も少ないので、のきさきマルシェではなるだけ地域にないようなお店、例えば焼き菓子、パン、クレープ、コーヒー屋さんなど、高知市内に行かないとないようなお店に出店を頼むようにしています。大正にある四万十高校には、県外からも学生が来ていますが、学生が楽しめるようなお店もありません。1日だけでも、おしゃれな雰囲気のお店や美味しいスイーツが食べられるようなお店を用意してあげたい、そんな気持ちが強いです。もちろん、地域外の方にも魅力的に感じてもらえるような出店内容を考えていますが、それでもやっぱり喜んでほしいのは地元の方です。」

 そんな小野さんの想いが伝わっているのか、地域の人はこのイベントをとても喜んでいるそう。「あんなに商店街に人がいるのは久しぶりに見た」、「すごくよかった。次はいつやるの?」、「毎月でもやってほしい」と、次回の開催を心待ちにしてくれる人も多いそうだ。いつもは寂しい商店街がたくさんの人で賑わう光景は、地元の人にとっても嬉しいものだろう。特に、町が賑やかだった時代を知っている世代にとっては、感慨深いものがあるのではないだろうか。

5年目の挑戦

 2022年に1回目が始まって、今年で5回目。5年目を迎えた今回も新たなアイデアを加えるなど、イベントの進化にも余念がない。

「今年は新たにスタンプラリーをやってみようと思っています。出店者を大正地域内、四万十町内、四万十町外の大きく3つにわけ、各地域のお店1店舗ずつ、合計3つのスタンプを集めた方には、イベントのオリジナル缶バッジをプレゼントする予定です。なるべくたくさんのお店を巡ってもらうことで、よりイベントを楽しんでほしいですし、お店の収益にもつながればとも思います。あとは、予土線利用促進対策協議会にご協力いただき、当日予土線を利用して来場された方限定で、マルシェで使える500円クーポンを配布してもらえるようになっています。予土線の利用につなげる狙いもあり、お得にイベントも楽しめるので、当日はたくさんの方に予土線を利用してお越しいただきたいですね。
 また、運営側の話になりますが、今年は初めて出店者の募集も行いました。今までは知り合いのお店など、自分で声をかけて集めていましたが、5年目の挑戦ということで、Instagramで周知して出店者を集めました。そのために、初めてのきさきマルシェのアカウントも用意して、イベント当日に向けて出店者の情報発信なども行っています。」

 さらにもう1つ、イベントのチラシにも使われていた熊のデザインが今年はイノシシに変わっている。4年間、熊のデザインだったので、すっかりおなじみになっていたが、実はあれはフリー画像だったそう。イベントのグッズ化も考えていたが、フリー画像では都合が悪いので、今回新たに作り直したのがイノシシだそうだ。「今後は、毎年動物を変えてデザインするのもいいかな」と、楽しそうに話してくれた。

町全体を賑やかに

 ここまでで、いかに小野さんたちがイベントを盛り上げようとアイデアを練り、準備を積み上げてきたのかがお分かりいただけたのではないかと思うが、実はこのイベントの主な運営スタッフはたったの4人。出店者の調整、広報、グッズ作成、保健所との調整や資金管理など、イベントに係る準備を4人でこなしているというから驚きだ。

「イベントを運営するにあたっての一番の課題は、運営メンバーの人数不足です。今はほぼ個人レベルでの活動になっているので、今後継続性を持たせていく意味でも、団体を作っておく必要があると思います。特にイベント実施に係る諸々の許可申請の際は、個人で対応するのもなかなか大変ですしね。ただ、現状団体を作る目途は立っていません。青年団や地域おこし協力隊、商工会、高校生やもちろん役場の方にも、備品の貸し出しや会場設営など手伝っていただいていますが、今後はまちづくり委員会等とも連携するなど、関係者を増やしていければと思っています。ただ、あくまでも住民主体のイベントであることが大事だと思うので、役場に頼りすぎないようにすることは意識していますね。あとは、収益を上げることでイベントの持続性も高まっていくと思うので、ちゃんと稼げるようにしていきたいです。
 今は駅から役場までの範囲を対象にしていますが、本当は大正の町全体でイベントをやってみたいんです。普段は入らないような路地にも出店してもらって、くまなく大正の町を歩いて探検してみてほしいなと思っています。なるだけ多くの空き家を活用できるよう、出店者も増やしていきたいですし、住民の方もバザーのように気軽に出店できる雰囲気にしていきたいですね。ただ、それをするにもやっぱり個人だと限界があるので、早く団体化して、体制を整えていく必要があると思っています。来場者数500人越えも目指したいですし、歩行者天国のように、その日だけは道路上に人があふれかえっているような光景を作り出したいし…夢は膨らみますね。イベントを通して、観光客の方はもちろん、出店者の方々に大正を好きになってもらって、空き店舗に入ってもらえたら。このイベントがなくても、町が賑やかな状態になることが、最終目標です。実際少しずつ新しくオープンしたお店も増えてきているので、今後もイベントを継続しながら、町づくりにつなげていけたらいいなと思います。」

 小野さんにとって、イベントは目的ではなく手段であり、イベントを通して空き店舗を減らし、賑やかな町を作ることが目的だということがよく分かった。空き家の所有者にも出店者にもきっかけを与え、両者のハードルを下げつつ、空き店舗の活用を目指す。実際にイベントが開催されるようになってから、喫茶店やコーヒー屋さん、ケーキ屋さんなど、おしゃれなお店が新たにオープンしており、傍から見ていても大正のまちが変わってきているなという実感がある。地域の人たちもこの変化を嬉しく思っているのではないだろうか。なによりも、イベントを毎年心待ちにし、開催を喜んでいる人たちが大勢いる。このイベントが末永く続いていくように、財団も微力ながらお手伝いできればと思う。

今年の大正のきさきマルシェ

 先週の3月22日に、第5回目となる大正のきさきマルシェが開催された。今年は、大正地域から8店舗、町内から14店舗、町外から12店舗、合計34のお店が集まり、1日限りの商店街が復活した。当日はお天気が心配されたが、イベント中はほとんど雨も降らず、奇跡的なタイミングでの実施となった。(小野さんは相当な晴れ男なのかもしれない。)それもあってか、たくさんのお客さんが商店街を訪れ、手作りスイーツや、特製の餃子やたこ焼きなど、ふだんはなかなか見かけない商品を手に取り、ショッピングを楽しんでいた。

町内外からたくさんのお店が集まっている

 私たちも四万十川すみずみツーリズム連絡会として出店し、四万十市西土佐にあるストローベイルSANKANYAさんのスイーツを販売。カップに入ったショートケーキと栗の焼き菓子を用意したが、さすがの人気ぶりで全て完売!特にショートケーキは開始1時間足らずで売り切れになってしまうほどだった。おかげさまで、たくさんの方にご来店いただき、すみずみの活動を知ってもらうことができた。こういった宣伝の機会は貴重なので、ぜひ今後も参加し続けたいと思う。

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