人口減少、高齢化が深刻化するなかで、何とか地域の活力を取り戻そうと奮闘する住民団体が全国各地で見られる。そんな団体を応援しようと、全国の地方新聞社と一般社団法人共同通信社が毎年行っているのが、「地域再生大賞」だ。昨年度、梼原町の越知面地区で活動する「チームシルク」が、この地域再生大賞の優秀賞を受賞した。地元の女性で活動するチームシルクは、いったいどのような活動を通して地域に活力をもたらしているのか。今回の清流通信では、チームシルクの取り組みと、地元への想いを紹介する。

活動の始まり

 今回お話を伺ったのは、代表の瀬戸口登貴恵さん。チームシルクの活動の始まりは、集落活動センターの立ち上げだったという。集落活動センターとは、高知県が平成24年からスタートした取り組みで、集会所や廃校になった学校施設を拠点とし、住民が協力して、特産品の開発や福祉サービス等の活動を行いながら暮らし続けられる地域づくりを目指すものだ。梼原町では各地区に整備し、住民主体による地域活動に取り組んできた。集落活動センターおちめんは平成28年に開所、旧越知面小学校を拠点に、宿泊業、特産品づくり、営農支援、アメゴ養殖などに取り組んでいる。

「集落活動センターを立ち上げるにあたって、町のほうから女性グループで何かやってくれないかと打診があったんです。そこで、地元の方が声をかけて集まったメンバーでチームシルクを結成しました。みんな越知面の方なので顔見知りではありますが、親交があるかというとそうではない、偶然集まったメンバーでしたが、今では信じられない程仲が良くって、不思議な縁だなと感じています。当時、私はJAの雇用促進部門に勤めていたのですが、商品開発にも携わり、ケーキの開発などを行っていました。前職でフードコーディネーターの大原一郎先生と地域の特産品開発に携わった経験を活かして、まずはシフォンケーキやパン作りから始めることにしたんです。でも、ただのシフォンケーキでは他と差別化ができない、何かないかなと悩んでいた時に、ふと地元の山に桑の木が生えているのを思い出したんです。越知面は昔養蚕が盛んで、多くの畑で桑を栽培していました。それが今でも山に残っていて、桑のシフォンケーキなら他と被らないと思ったんです。乾燥させた桑の葉を粉末にして、生地に混ぜて焼いてみたところ、とても鮮やかな緑で、香りのいいシフォンケーキができました。今では私たちの看板商品になっています。」

 さて、「チームシルク」という素敵な名前、瀬戸口さんの話からピンときた方もいると思うが、桑が名前の由来になっている。桑は蚕のエサになり、その蚕がやがて絹(シルク)を作り出す。蚕が桑でシルクを生み出すように、チームシルクも桑で素敵な商品を生み出している、まさにピッタリな名前だ。立ち上げ当初はカフェも営業しており、その名前も「カフェくわのみ」だったとのこと。かつて地域を支えた桑が、地域に活力をもたらすグループの“核”になっているようだ。

モットーは自分たちが楽しいこと

 集落活動センターの活動のなかでも、特産品づくりを担当しているチームシルクでは、シフォンケーキの他に、菊芋チップスや焼き肉のタレ、ピザやパンの販売を行っている。週に1回、センター内の調理室で仕込みを行い、マルシェゆすはらや町内のスーパーで販売している他、パンやピザなどは役場や病院でも販売しているという。

「地元の素材を使って10種類のシフォンケーキを開発しています。桑の葉はもちろん、八重桜の塩漬けを使った桜味も人気です。メンバーのなかにお酒好きが2人いて、『お酒のケーキを作りたい!』という発想から、ブランデーを使ってケーキを作ったら、それがまさかの大ヒット。私たちの商品開発は『あれをやってみたい!』という思いつきです。それを絶対に否定しない。すぐに『やってみよう!』という反応が返ってくる。それが私たちのいいところだと思います。個性的なメンバーばかりですが、ケンカしたことは一度もないですね。私たちのモットーは自分たちが楽しいこと、あとは失敗を恐れないことです。週1回の活動では、必ずみんなで賄いを食べるようにしているんですが、その時間が本当に楽しくて、いつも笑いが絶えないんです。そうやって楽しみながらできていることが、活動が長続きしている理由ではないかと思います。自分たちが楽しむことで、地域が元気になってくれればそれが一番いいですよね。商品開発の話ではありませんが、実は地域の夏祭りでの出し物の大トリはいつも私たちなんです。毎年奇想天外なアイデアで、『今年のシルクは何をするがやろう!?』と楽しみにしてくれている方も多くて。去年はマツケンサンバ、一昨年はお相撲さんの格好で、キャンディーズの年下の男の子を披露しました。観客を巻き込みながらのステージで、地域の方もとても楽しんでくれています。地域の方が笑顔になってくれるのも嬉しいですが、なにより私たちが楽しいからやっているというところもありますね。」

 現在5名で活動しており、そうは見えないが全員が70代。結成してから親交が始まったというが、いつも笑いが絶えないという。性格も前職もバラバラだが、団結力はピカイチだと、瀬戸口さんも自信を持つ。グループの仲の良さを象徴するのが、メンバーが持っている名刺だろう。瀬戸口さんはシンプルに「代表」だが、他の4人は、「金庫番」、「工場長」、「素直な下働き」、「用を足さない用務員」と実に個性的な肩書を持っているのだ。遊び心たっぷりの肩書だが、瀬戸口さんが命名したそうで、ネタとして引き受けてしまうユーモアたっぷりな楽しいグループであることが、名刺からも伝わってくる。

「なかでも仲の良さを印象付ける出来事があって、メンバーの体調不良などもあり、一度解散の話が出たことがあったんですが、メンバーの1人に『ここがなくなったら、わたしはいつ笑えばいいの?』って言われたんです。その時に、地域だけでなく、自分たちにとってもチームシルクが必要なんだと気づきました。」

地域を見守り、地域を活かす

 瀬戸口さんたちは、「地域まわり」の活動も大切にしている。地区内には、1人で暮らすお年寄りや移住者も多い。孤独な状況を作らないように、家を訪ね話し相手になることで、日常生活での困りごとや、身体の不調などを確認し、役場にも情報を共有しているという。

「月に1回、メンバー2人で地域のお年寄りのお宅に伺い、世間話をしながら困りごとなどがないか確認しています。確認した内容は役場にも共有していて、行政サービスにもつなげてもらっています。行政だけで個々人が抱える課題を把握することは難しいですし、私たちのほうがもっとフランクに地域の方もお話しできると思うんです。というのも、訪問の際にはチームシルクで作ったパンを持っていって、それを買っていただいているんですが、そうすることで『サービスを受けている』という意識が薄れるのか、より気軽な気持ちで相談ができ、なんでも話せる雰囲気が生まれるのかなと思います。また、地域まわりをすることは私たちにもメリットがあって、商品開発のきっかけになることもあるんです。ある時、見回りに訪れたお宅の軒先ににんにくが干してあったので、何に使うのかを聞いてみたら、特に使い道はないけど畑でできたからということだったんです。そういうことなら、私たちで買い取って何か商品を作ろうということになって、そうしてできたのが焼肉のタレです。このタレも、にんにくはもちろん、地元の素材を使うことにこだわって作っていて、『すごっすぎ甘口』」、『うまっすぎ辛口』、『豚丼用のタレ』の3種類を販売しています。他にも梅を買い取って梅干しにするなど、地域の方から農産物を買い取って商品にすることで、『シルクが買ってくれるから』と地域の人がやりがいを感じながら、作物を作り続けることができるのではないかと思います。」

 チームシルクが地域の方から農産物を買い取り、それで商品作りをしながら、地域の魅力を伝える。とことん地域に還元するシステムが出来上がっており、住民にとってもなくてはならない存在になっているのではないだろうか。実際、「自分が作ったものがシルクで役立ててもらえる」、「育ていてよかった」と喜んでくれる住民も多いという。チームシルクの活動は、地域住民の生きがいづくりにもつながっているようだ。地域再生大賞の優秀賞は、地域を見守りながら、地域資源を活用し、住民の生きがいづくりに貢献してきたことが評価された結果ではないかと思う。

みんなで取り組む地域づくり

 長年地域の活性化に取り組んできたチームシルク。これまでの活動で越知面がより魅力ある地域になったことは間違いないが、一方で地域住民の高齢化は止まってくれない。どうしても体力の衰えから活動的に過ごすことが難しくなるが、それでもなにかできることを見つけて元気に暮らしてほしい、と瀬戸口さんたちは願っている。

「今後の目標としては、地域の人が地域づくりに“参加している”という意識を持って、一緒に地域を盛り上げてもらえるような環境を作っていきたいと考えています。集落活動センターに”やってもらう”のではなく、自分たちも地域づくりに関わっていると思ってもらえたらいいですね。地域活性化は、お年寄りにだってできます。私たちの活動を見てそう思ってもらえたら、活動している甲斐がありますし、『自分にもできる!』と思ってもらえるように、農産物の買取も含め、今後もいろんな働きかけをしていきたいなと思っています。また、やっぱり私たちも高齢になってきていますし、次世代にバトンを渡していかなければいけないのですが、その人材がなかなか見つからないのが課題です。もしかしたら私たちの仲が良すぎて、入ってきづらい雰囲気があるのかもしれませんが(笑)。でも、やはり地域が元気で居続けられるために、私たちのような働きかけができる存在が必要だと思うので、なんとか繋いでいきたいですね。」

 越知面地域は、以前の清流通信でも紹介したように、若い人が地域づくりに関われる環境づくりに力を入れてきた。お祭りには地域の若者が中心に関わるなど、若いうちから地域づくりのメンバーとして活躍する場を提供してきた。そういった下地がちゃんと整備されているので、若い人が地域活動に参加することへのハードルが他に比べても低いのではないかと感じている。チームシルクの活動は、地域住民の生きがいづくりにもつながる、地域になくてはならない活動だ。和気藹々とした雰囲気とポジティブな勢いで、これからも地域の方を巻き込みながら、長く活動を続けていってほしい。

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