高知県西部、四万十川流域の山間に広がる梼原町の神在居地区。ここに広がる神在居の棚田は、「棚田百選」にも選ばれた美しい農村景観のひとつです。急峻な地形に沿って築かれた幾重もの石積みは、この地域の暮らしと技術の積み重ねそのものといえます。
今回、その石積みの修繕をテーマにしたワークショップが2日間にわたって開催されました。主催は梼原町教育委員会ですが、今回は文景協が進めている文化的景観普及啓発ワークショップの一環も兼ねて行っていただきました。約10名の地域住民の方にもご参加いただき、講師には一般社団法人石積み学校の金子氏を迎え、実践を通じた技術継承の場となりました。


まず、金子さんより、石積みがどういう仕組みで安定しているのか、どんなルールで組まれているのかについて説明がありました。普段なんとなく見ている石積みも、ひとつひとつに意味があることをすることができ、参加者も熱心に耳を傾けていました。


現場に移動して、まず取り掛かったのは既存の石積みを崩す作業です。一見すると「壊す」作業ですが、石積みの修繕においては最も時間と手間を要する工程とされています。一つひとつの石の配置や力のかかり方を確認しながら、慎重に解体を進めていきました。
崩し終えた後は床掘を行い、土台を整えていきます。今回は水が多く湧き出す場所だったため、まずぐり石を敷き、その上に根石を据える方法を採りました。根石には、なるべく大きく重い石を使用します。石積み全体を支える「要」となる部分であり、ここが安定しているかどうかが構造全体の強さを左右します。
根石が据わると、いよいよ積み石の工程へ移ります。積み上げのポイントとして金子さんが強調したのは、
- 石の「面」を見極めること
- できるだけ自然の形を活かし石を長く使うこと
- 尻下がりに据えること
- 石を置いた後は必ず裏側にぐり石を詰めること
特に重要なのは、実は「積み方」そのものよりも、裏込めに使うぐり石の詰め方だと言われます。内部の空隙をしっかり埋めることで、構造全体の安定性が大きく高まるのです。参加者は隣の石との噛み合わせや、次に置く石の形状を金子さんに相談しながら、一つひとつ丁寧に積み上げていきました。








石を積む人、積み石を運ぶ人、ぐりを運ぶ人など、それぞれが作業を分担しながら、連携して作業を進めていきます。そのおかげか、想定以上のペースで作業が進み、当初2日間を予定していた修繕箇所は、なんと1日目でほぼ完了。そのため2日目は、急きょ下段の農地の修繕をすることになりました。
2日目:新たな農地を修繕!
2日目は文景協メンバーと地元住民が中心となり、作業を継続しました。この日は、崩した現場から出た石のみを使って積み直す必要があり、資源が限られる中での工夫が求められました。さらに、この場所も水が豊富に湧き出す場所だったため、前日同様にぐり石を丁寧に敷き込みながらの作業となりました。限られた条件の中でも、石の形と役割を見極めることで、なんとか安定した石積みを完成させることができました。





技術をつなぎ、風景を守るということ
参加者の皆さんの協力のおかげで、結果として予定していた1箇所に加え、2箇所の修繕を完了することができました。神在居の棚田の石積みは、単なる農地の構造物ではなく、地域の歴史と暮らしが積み重なった文化的景観そのものです。しかし、高齢化などの影響により、その維持は年々難しさを増しています。今後もこういったワークショップを活かして技術をつなぎながら、美しい風景を残していきたいと思います。
参加者の皆さん、講師のみなさん、本当にお疲れさまでした。
