(今回の要旨)話の前提として、環境が生物・生態系に及ぼす作用に対する反作用には大きなタイムラグがあることが多く、ぱっと見では因果関係が見えにくい場合もあることに留意する必要がある。

以下、先生のお話に沿って説明します。

山に登ると自然の風景は一見不変に見えるが、実際は長い年月をかけて変化している。石鎚山の1989年と2015年の写真をくらべても、シラビソなどの常緑樹が増えているのが分かる。

一方で石鎚山には笹類に覆われた笹原がある。笹原は厚いリターと光競争における優位性により樹木実生の定着を阻害しているが、1968年、60年に1度といわれている開花により大規模な笹枯れが発生、研究者達はこれがきっかけで笹原が樹林化するのではないかと推測し、観測を始めた。

これを空中写真で追っていくと、

樹林化には至らず、もとの笹原へと戻っていった。しかし、以前と違って所々に斜面崩壊が見られるようになった。その最大の原因は昭和47年の台風9号による雨であるといわれる。

その、崩壊した斜面周辺に樹林が定着していく様が見て取れる。

下記は当該斜面におけるシコクシラベの個体数推移。斜面崩壊からしばらくして顕著な増加傾向が見られる。

このように、環境が生物・生態系に及ぼす作用に対する反作用には大きなタイムラグがあることが多く、ぱっと見では因果関係が見えにくい場合もあることに留意する必要がある。

☆本メモの表現等は比嘉先生のご講演を基に事務局長神田がまとめたものであり、先生のお話そのものではありませんので、その旨ご了承ください。

比嘉基紀先生「日本の土地利用の変遷と生物多様性・その保全」@四万十川自然再生協議会総会記念講演 その3へつづく