山崎 準志(やまさき じゅんじ)

山崎 準志さんの基本情報

・四万十市 勝間出身 

・専業川漁師

・大人塾講師

山崎さんってどんな人? 

リバマスの山崎さんと言えば、四万十川流域では大変珍しい専業の川漁師です。また川漁師の育成にも大変熱心で、当財団も大人塾の川漁師養成講座では大変お世話になっています。その面倒見の良さには、ただただ頭が下がるばかりです。

例えば、投網・投げ網の練習会を年間10回以上開催されています。(↓)

全くの初心者から経験者、地元の強者まで集まってきて、みんなで楽しく、わーわー言いながら、自然と技が受け継がれていきます。アフターフォローもしっかりしていて、グループLINEで年中丁寧に対応されています。ここまでしてもらって参加者は基本無料なのです。

そして、何と言っても、凄いところが、これまでに何名もプロ漁師を輩出しているところです。リバマスの生川さんや原さんしかり。食べていけるように熱心な指導はもちろん、漁場や売り先を段取りしてあげたり、時には山崎さんが買い取ることもあるそうです。自分が食べていくだけでも相当厳しい川漁の世界で、ある意味ライバルを増やしてしまうこのような行為がなぜ出来るのか伺ってみました。

山崎さん「投げ網(ナゲアミ)はまだやる人がいますが、投網(トアミ)をする人は本当に少ない。10人以下だと思います。高齢化も進み、このままでは消滅してしまうかもしれない。伝統が途絶えてしまうのは悲しいので、投網をする人を少しでも増やして後世に残していきたい。無料にしているのは、その方が少しでも参加してもらいやすいから。お金じゃない。ライバルは増えていくけど、一人勝ちするよりもワーワー言いながら獲るのが好き。」

※投げ網と投網の違いは次の動画をご覧ください。山崎さん自身が解説しています。

専業川漁師への歩み

山崎さん自身も一朝一夕に川漁師として食べていけるようになったわけではありません。どのような過程を経たのでしょうか。

高校卒業後、ガソリンスタンドで働いていた山崎さん。働きながらも心のどこかで「川の仕事がしたい」と思っていたそうです。そこには子供時代の四万十川で遊んだ楽しい記憶があったようです。「川でしか遊ばんかった」と言います。

二十歳になった時、ある観光系の会社が「アトラクション漁師」を募集していて、転職しました。アトラクション漁師とは、屋形船に乗った観光客に投網を披露する仕事です。毎日30~50回投げ、ハイシーズンには100回近くも投げたそうです。26歳まで続けましたが、腰を痛め、このまま続けたら体を壊すと感じ、専業川漁師として独立を決意します。

投網とシバヅケ漁とエビ漁で生計をたてようとしますが、山崎さんは「最初は生活できるレベルじゃなかった。嫁が助けてくれた。」と言います。専業でやっていける兆しが見え始めたのは、投げ網を始めてから。きっかけは、投げ網をしていた地元漁師に教えてほしいと声をかけたこと。「網を作ってきたら教えちゃる」と言われ、なんと翌日には、網を仕立て、地元漁師の前で一回投げたら「上等!」と言われて、あとは独学で身に付けたそうです。投げ網を身につけた事で専業でやっていける見通しが立ったそうですが、「アトラクション漁師」あがりとは言え、実際には「アユを見る目」が出来ておらず、最初は思ったような釣果が上がらなかったそうです。

川漁師のライフスタイル

山崎さんの年間スケジュール

次は、川漁師のライフスタイルを垣間見てみましょう。投げ網漁が始まるのは7月1日から。アユが岸に寄っている明け方の2時間と夕方からの数時間が勝負になります。2024年は近年稀にみる不漁の年でしたが、それでも山﨑さんは平均2kgぐらい獲っていたそうです。そして、心配されていた2025年は、蓋を開けてみれば豊漁の年となり、平均4~5kg、最高20kgも獲れたそうです。

投げ網は水量が少ない程有利になり、増水時は、基本的に投げ網は出来ません。代わりに増水時に行うのが投網になります。川舟を車で牽引し、アユがたまるポイントまで行って、舟から投網を打ちます。

そして、専業のもう一つの柱がウナギ漁だそうです。1月から3月まではシラス漁、4月から9月までは延縄漁を行います。延縄漁は1本が50m以上ある縄に35本の針をつけるそうです。それが多い時で18カゴあり、合計600本もの針を仕掛ける事になります。

山崎さんは「待つのが嫌い」だそうで、夕方から仕掛け、夜10時には回収するそうです。ウナギが一番動き出す時間帯でもあり、ウナギが死ぬ前に回収できるメリットがあると言います。糸に巻きつき、死んだ状態で朝方までおくと、内臓が腐ってしまって商品にならない事もあるそうです。チャンスは、増水して水が引き始めた次の日。活性が上がっており、多い時で10kgも獲れる事もあるそうです。

たくさん獲るためのコツは、針をちびさせない事。「延縄は向こう合わせ、針の尖が肝」だそうです。以前、こんなエピソードがありました。あるお弟子さんに舟で延縄を仕掛けさせたところ、ほんの少し、底を引きずってしまったようで、その様子を見てもいない山崎さんが、針先の尖だけで見抜き、何十本もの針を廃棄していました。プロの世界の厳しさが垣間見えました。

川漁の6次産業化

山崎さんは、ご自宅に加工場を併設し、獲ったアユやウナギをマイナス60度で冷凍保存できるようにされています。それを大型連休やイベント時に、炭焼きにして、販売しています。赤字になる事もあり、どんどん獲って、市場に出荷した方が、利益になるそうですが、イベントなどでお客さんに直接美味しいと言って食べてもらうのが好きなのだそうです。

取材を終えて・・・

山崎さんの男気溢れる、素敵なお人柄が少しでも伝わったでしょうか。私自身も「組員」の一人なのですが(笑)、川漁の事はもちろん、利益や効率を追い求めない、豊かな生き方を見習いたいと思うのでした。今後ともよろしくお願いします!