目次

1 四万十川で”かわまちづくり”をしたい

令和4年から四万十川で” かわまちづくり “の計画がスタートした。その計画を推し進めるのは、四万十市まちづくり課 の 濵田聰 さん。出向先の 四国地方整備局 河川部で かわまちづくり を担当して、人と川を繋ぐ素晴らしいプロジェクトだと感じたそうだ。四万十市役所に戻り改めて四万十川を見ると、イベントでの利用はあるものの、日常的に利用している人はごく一部で、泳ぐ子供達を見たことも無いし、案外市民には使いにくい川なのだと思った。濵田さんは、渡川緑地(四万十川河川敷の公園)を管理する部署に配属されたのを好機とみて、かわまちづくりで四万十川を変えてみようと動き出した。

濵田「行政だけでイベントを考えても、面白いものができません。人を呼び込んで盛り上げるのは、民間事業者の方が長けています。近年の規制緩和(河川空間のオープン化)で、民間事業者が河川敷を使いやすくなりました。かわまちづくりのように、行政が整備したハードを民間事業者が活用する仕組みは、収益や雇用の拡大にもつながります。次の展開を考え、活用してくれる人たちにバトンを渡せるのは非常に良いと思いました。四万十市に来てもらっても中心市街地に滞在できる場所が少なく、お客さんは四万十川をちょっとだけ見て、次の場所に移動しています。中心市街地に(四万十川を取り込んで)人が滞在できる空間をつくることが大事だと考えています。」

“「かわまちづくり」とは『河川空間とまち空間が融合した、良好な空間形成を目指す取組み』のことです。

 古くから培われた地域の歴史や文化、人々の生活とのつながりなど、水辺にはその地域特有の「資源」が眠っています。また、水辺はその使い方や「知恵」によって新たな価値を生み出す可能性を秘めています。

 「かわまちづくり」では、「かわ」とそれにつながる「まち」を活性化するため、地域の景観、歴史、文化及び観光基盤などの「資源」や地域の創意に富んだ「知恵」を活かし、市町村、民間事業者及び地元住民と河川管理者の連携の下、地域の「顔」、そして「誇り」となるような空間形成を目指します

四万十市 四万十川かわまちづくりプロジェクトについて
〈 https://www.city.shimanto.lg.jp/site/plans/7419.html  〉

*国土交通省は平成21年からかわまちづくり支援制度を創設し、地域のかわまちづくりの取り組みを河川管理者が支援する制度になっている。推進主体はかわまちづくり計画を河川管理者と共同で作成し、河川管理者は登録された計画を基に必要なソフト施策・ハード施策の支援を行う。現在、全国200以上の団体がかわまちづくりをおこない、各地で川と人の新たなにぎわいが生まれている。

濵田聰さんとワーキンググループ座長久保茂さん

2 四万十川かわまちづくりの計画をつくる

・目標と体制

四万十川のかわまちづくりの基本方針は「 川でつながるひと・まち・未来の創生 」、目標は 「① 安全安心に川と触れ合える水辺空間の創出、② 地域や事業者などが河川空間を活用したさらなる取り組みの推進、③ 中心市街地と四万十川の魅力の向上を図るとともに回遊性を高め、交流人口の拡大を図る 」という3つだ。体制については、四万十市が推進主体となって、河川管理者の国土交通省とかわまちづくりを進めていく。令和6年度の計画登録に向けて、令和4年度から「かわまちづくり協議会」と「かわまちづくりワーキンググループ(※四万十川財団も参画しています)」が動き出した。ワーキンググループが計画立案し、協議会で決定していく流れだ。令和5年度までにに協議会が2回、ワーキングが5回開かれた。

・4つの前提条件と『 四万十川の景観や自然環境を必ず守ろう 』

計画を考える際には、「 ① 四万十川の自然や景観への配慮、② 四万十川で暮らす人々の営みへの配慮、③ 既存施設の再編・活用の優先、④ 河川管理上の問題がないこと 」を前提条件にしている。

濵田「今まで自然であることを大切にしてきた四万十川に人の手を加えるとなると、理解を得るのは簡単ではありません。このため、『 四万十川の景観や自然環境を必ず守ろう 』を基本にスタートしました。人が手を加える場所については、自然景観に配慮した構造物にするよう考えています。四万十川を生業の場とする人達、漁協なら鮎の産卵場、ヤナギ林もマイヅルテンナンショウの会など、四万十川の環境を大事にしている人がいます。その人たちの生業を崩したらいけません。手を加えるところは環境配慮を十分にやっていこうと、ワーキングメンバーの人達と話しています。メンバーの皆さんは四万十愛が強く、ワーキングをしていたら白熱しすぎて、終わらないほどです。それがゆえにまとめることが難しいと思うこともあります。」

3 どんな四万十川になる?

・ ワーキンググループの検討

今までにワーキンググループで5回の議論を重ねてきた。1回目は実際に四万十川に行き、現状を共有した。その後、四万十川でやりたいことについてメンバーやその関係者から200個ほどのアイディアを集めると、川遊びを中心に人を水辺に近づけるイメージのアイディアが多かった。メンバーで話し合い、選定したものを進めていこうという話になったが、座長である入田村代表の久保茂さんが「これは机上で考えただけで本当に必要なものかはわからんぞ、間違って偏った方に行っていないか心配だ。」と疑問を呈した。そこで、市民ニーズ調査のため、菜の花祭りや納涼祭などの機会を借りて、協議会が行う社会実験を3回積み上げた。その結果、延べ320件のアンケートを集め、当初考えていた、安全に川遊びがしたい、河原へ降りやすい道が欲しい、マルシェ等のイベント開催の期待、洗い場等の炊事設置などの声が上がった。

・ 久保座長のはなし

ワーキンググループ座長の久保茂さんにもお話をきいた。久保さんは今回かわまちづくりをする入田地区にある営農法人「入田村」代表で、同法人は20haの田畑で里芋やサツマイモを中心とした農産物を栽培・出荷している。出資者は入田地域の住民37名で、実働者は7~8名で活動している。

久保さんに、ワーキンググループで方向性に疑問を呈した、その真意を聞いてみた。
「漠然と、全体の構想の中でどんな形で具体化されるか、極端な意見のままで進むことに不安がありました。個人的に、四万十川の魅力は自然がベースだと思っています。私は、入田という、川のほとりに小さい時から住み、自然のありがたさと恐さを理解しています。ですので、風景とマッチした施策であってほしい、四万十川の大自然を未来永劫活かす開発をしていかなければと思っています。今は、かなり具体化し、良い方向に行っていると思います。初めは、そういうのが見えていなかったので、モヤモヤしたものがあり発言しました。すぐに濵田さんが、市民ニーズの聞き取り案を答えてくれたので納得しました。他のかわまちづくり事例は人の手が入ってきれいに計画されていますが、同じような例になったら面白くありません。四万十川らしさをどこに求めるか。昔、市役所で務めていた時、中国の交流員の女性に四万十川は中国にはない桃源郷のようなところだと言われたのが印象に残っています。上流の屏風のような山脈から滔々たる川が流れ、街は東南に開き、海を想像させる、箱庭のようなところだと。」

社会実験やアンケートの実施で市民ニーズを調査し、それらを集約した意見が反映されたイメージパースができている。それを久保さんに見てもらった。久保さんは「整備で駐車スペースも広がるのは利用者に良いことです。社会実験でのサップ利用も良かったです。今のイメージパースで問題はないと思います。納得できました。」という。

・ 四万十川は「 川で遊べる 」を推したい

安全に遊べる四万十川には人が来る!

かわまちづくりで、四万十川はどう変わっていくのだろうか。濵田さんは、「四万十川を利用して欲しい。」「四万十川で遊んでほしい。」を何度も口にした。

濵田「黒潮町の蜷川という小河川には河川プールがあって、夏にはたくさんの人が集まります。河川プールは小さい子と中学生くらいの子が遊ぶ場所が分かれていて、安全・安心に遊びやすい環境になっています。一方、四万十川は川が大きくて、蜷川のように使いやすく泳ぎやすい場所はありません。川に近づく道もなく、入田の河原から水面までも遠い。もし、容易に近づけ、川遊びができる場所を四万十川に整備したら、自然と地元の人たちが四万十川で遊ぶようになると思います。これは、今まで四万十川を通過していた人たちの足を止め、滞在してもらうことにも繋がっていきます。四万十100年史に、四万十川で100人の子どもたちが海パン一丁で泳いでいる写真がありました。これには驚きましたが、四万十川も本来は泳ぎにくい川ではないと思います。ただ、昔と今では子どもの育て方が変わってきて、より安全への意識が強くなってきました。支川で遊ぶ人たちは今でも多く、川遊びの需要はあるので、安全に遊べるのなら、地元の人は四万十川で遊んでくれるでしょう。社会実験を通して、川遊びを企画すると20人近く集まりました。服のまま川に入り始める子や、県外から来てくれた赤ちゃん連れのご夫婦もいました。泳ぎに限らず、サップや上流からカヌーで下ってきてキャンプで一泊するとか、河原でBBQする人たちやテントがいっぱい並ぶとか。地元の皆さんに四万十川で遊びませんか?、民間事業者の方に利用しませんか?と呼びかけたいですね。」

景観と整備の両立

濵田「菜の花祭りでは、舗装されていないから歩きづらい、車いすの人からも行きにくいと言われているので、景観のために黒いアスファルト舗装ではなく色合いを作った舗装を入れたらどうかと思っています。コロナが始まってからキャンプが流行り、キャンプ場の利用者が多くなりました。去年は1300~1400人が利用していますが、移動式トイレ1つしかなく、臭いなどの苦情もありますので、常設トイレを作りたいと思います。入り江は、スロープが今もついていますが、ボロボロで車もようやく入るくらいです。整備したら、川舟もおろせるし、ちょうど社会実験でサップをしましたが、そういった活動もできたら良いなと思います。アンケートでキャンプ場の洗い場整備と要望がありますが、実際にキャンプをしていたキャンパー100人に聞いたところ、『触るな、何もするな。トイレ整備は良いけど、このままでもいい。景観を楽しみに来ているから、そのままにおいてください。』と言われました。そこはちゃんと考えないといけません。」

 以上を取りまとめて現段階でイメージ図にすると、下のようなものが出来上がった。

現在の赤鉄橋上流

4 課題とこれから

計画作成を進める中で課題に感じている部分もあるという。
濵田「課題は、自分たちが整備した水辺空間を利用してくれるプレイヤー(民間事業者)が誰なのかわかっていないことです。現在、四万十川を利用するプレイヤーは一時的なイベントに出店する民間事業者のみです。一番の理想は、環境整備後、そこに自然と人が集まり、キッチンカーが出てくるような、民間事業者が自発的に利用したいと思ってくれることです。また、水辺空間の利用促進に向けて、行政と民間事業者の橋渡しや、全国に四万十川のポテンシャルを発信するため、地域おこし協力隊の活力を導入できないかと考えているところです。」

今後計画作成が順調に進めば、令和6年度の国交省が募集するかわまちづくり計画登録を申請し、登録されれば、令和7年度から国交省の補助や市の国費分を予算に充てて、ハード整備が進んでいくことになる。「来年の登録に向けて走っていきます。調査で必要性の整理もしましたので、今後、河川管理者の国と『どこで・なにを・つくれるのか』について協議を進め、合意形成を図ります。次に、合意形成を得た施策をワーキングメンバーに打ち出し意見をもらい、承認を得て協議会に持っていき、『 四万十川かわまちづくり計画 』を策定したいと思っています。計画後、環境整備が整った後にも課題が出てくると思います。そうすれば、2期計画のように積み重ねて良いものを作って行ければいいかもしれません。5年間の計画なので、令和12年までに完成予定です。いずれ、自分の子どもや、もしかしたら孫が楽しく四万十川で遊んでいる光景が見られたら良いなと思います。」と未来の展望を明るく話してくれた。

5 四万十川だからこその計画を

四万十川かわまちづくりプロジェクトについて (四万十市HP)

https://www.city.shimanto.lg.jp/site/plans/7419.html

今現在全国で展開しているかわまちづくりだが、その多くは都市河川を活用したまちづくりだ。一方、四万十川は日本を代表する自然河川である。都市河川と四万十川とは、川の使い方から、客層、利用シーンまで異なってくる。従って、四万十川のかわまちづくりは、ほぼ先行事例のない取り組みとなる。

多くの生物が暮らす豊かな環境を、人が邪魔せずできるかぎりそのままに、上手く活用させてもらうことは可能なのか。「四万十川かわまちづくりプロジェクト」は、四万十川だからこそ、そこを妥協しない計画になることを期待したい。今まで、多くの人が四万十川を守るために活動を続け、次世代へ繋げたいという想いを継いできた。この計画が、それを大きく後押ししてくれるものとなることを願う。

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