11月1日の高知新聞1面に「 津野町の『山』貸します 」の見出し。
四万十川源流域で面白い動きが始まったようです。「山が荒れて、川が変わった。」流域でよく耳にします。管理する人が減った山の荒廃が大きな課題となっていて、解決には新たな発想が必要です。早速取材してきました。

目次

1 森林レンタルとは?

・全国で広まる森林をレンタルする動き

 コロナ禍以降、キャンプブームが到来している。時を同じくして、岐阜県白川村にある製材会社 山共株式会社が森林レンタルサービス「forenta」という事業をたちあげた。発案者の田口房国さんは、ドイツ視察で知った家族や友人とが森林で過ごすドイツの人たちの姿に感銘を受け、じゃあ日本でもやってみようという軽い気持ちで始めたそうだ。募集を始めると17組の枠に440組もの応募があり、今では、全国10都道府県に広がっている。「Forenta」以外にも、森林レンタルを始める会社が増えている。四国では、大阪の企業が愛媛県内子町で森林レンタルを始めた。

有限会社稲田建設

・津野町で森林レンタルできます。

津野町で山を貸し始めたのは、同町にある稲田建設さん。今年の8月ごろから事業着手し、「 四国森林レンタル ー 集まれ四万十の森  ― 」を立ち上げた。1区画100坪、年間44,000円で森林を丸ごと借りる。その場にある植物、土を自由に利用でき(建築は不可)、食べられるものを発見したらラッキー。木が邪魔で夜の星空が見えないなら、木を切って視界をクリアに。ただ、トイレや水場、お風呂もない点には、注意が必要だ。

森林をレンタルしたい人は、HPの問い合わせから応募する。その際、これはキャンプ場ではなく、不便なところもあることを理解してもらうために、しっかりとヒアリングを行い、それから現地の内覧に移り、無事に合意ができれば契約となる。契約がおわると、利用者は1年間自由に森林を使うことができる。

レンタルまでの流れ

現在、5つの区画があり、全てが離れた場所にある。一般的な森林レンタルでは、平地が区分けされ、別の使用者がすぐ近くにいる状況だという。その出会いから、新たなコミュニティーができることもあるらしいが、せっかく森林にいるのにキャンプ場と変わらないといえなくもない。一方、「集まれ四万十の森」では、完全なプライベート空間で森林を満喫できる。レンタル予定地の3か所を見学させてもらった。

1,2カ所目は、道路を挟んで向かい合わせ。アピールポイントは道路から近いところだ。ちょっとした買い物や用事があるときに、車まで戻りやすい場所にある。また、稲田建設の事務所も近いので何かあったら頼ることができそうだ。

①道路下の優良物件

道路から1段下がった位置にあるのでアクセス抜群!道路から丸見えだが、あまり人が通らない道路なので問題はない。小さな川が流れているので、簡易的な洗い物が可能。平地に近く作業性が良さそう。

道路左側一体が区画になっている
奥に小さな川が流れる

②プライベート重視。アクセスも良し。

 見せてもらった二か所目は、道路から1段上にあるので人の目に触れにくい。少し傾斜がある場所だが、山らしく良い雰囲気。

少し傾斜がある
道路の右上が区画
見上げると空まで高く伸びる木々とこもれ日

③斜面地

 3か所目は山の上にあるので、道中の見晴らしが最高。スギやヒノキの人工林の中にある。傾斜があるので少し平らに整地された場所も用意されている。

下に傾斜がある
トライアルで使っている箇所なので整地された場所もある
道中の景色 稲田建設の運営する茶畑もある
道中の景色 四国山地がきれいに見渡せる

残りの二つは天狗高原の近くにあり、より森林を感じることができる場所だという。

2 建設会社がなぜ森林レンタルをするのか?

社長の稲田将人さんのお父さんがもともと林業を営んでいて、津野町のあちらこちらに350haの山を保有していた。ある時、天狗高原のセラピーロードを監修している桂信太郎先生(高知工科大学教授)が、森林の利活用をしたい企業を探していると社長が聞き付けた。そこで稲田社長が桂先生に連絡を取り、森林レンタルの話を聞いたことが始まりだったそうだ。
稲田社長「山を持っているだけでは何もならない。儲けるものでもないし、山を使ってくれる人がいるのであれば、ほったらかしにするよりは良い。何よりも、初期投資をせずにすぐできる。」
森林レンタルの話を初めて聞いたのが7月頃。建設会社なので、重機が必要な準備は社内で完結し、他には特に準備もいらないとあって、スピード感をもって事業化できたようだ。

建設会社が森林レンタルをする強みは、重機を使えることにある。光を入れたい、星空が見たいとなれば木を伐ることはお手の物。津野町の山は傾斜がきついが、少しだけ平地を作ってほしい、仮設トイレをたててほしいなどの要望にも対応可能だという。一緒に話しあいながら、空間を作っていくことができるのは魅力的だ。だが、森林レンタル担当者の笹川聖司さんは、「レンタルを開始した当初は、わからないことばかりだった。そもそも借りてくれる人がいるのか・・・。」という心境だった。

高知新聞に載ってから、何件か問い合わせがあった。30~60代の方々がキャンプ場として利用したいということだった。ヒアリングと現地視察の結果、最終的には「思っていたのと違う(自宅から遠いこと、傾斜がきついこと、水場がないことなど)」という理由から契約には至っていない。現在は知人家族にトライアル利用をしてもらっている。

現在は解決すべき課題が見えてきたところだ。キャンプ場ではない、不便な山の中を楽しんでもらうためにどんなアピールをすればいいのか。まずは、使い方のイメージを持ってもらう必要がある。秘密基地を自分でつくれるようなワクワク感を楽しんでほしいという。年間利用できるので、その場の木を使ってコツコツと家具を作れば、自然の中にオリジナル空間が誕生する。キャンプとプラスアルファを楽しめる人にうってつけの場所である。まだまだ、始まったばかりの遊び方なので、どうやって使いこなせばいいのかがポイントになる。


笹川さん「自分たちでもトライアル利用してビフォアアフターを見せたり、モデルルーム的なものを見せていきたいと考えています。『森林レンタルとは何ぞや』をつたえるのが難しいところです!サバイバルゲームの利用でも良いですし、企業の福利厚生の利用、研修の利用、森林浴など、使い道の可能性はたくさんあります。これから社内で議論を進めていきます。」

稲田社長にこの事業の魅力と可能性を聞いた。
稲田社長「(この事業の魅力は)ほったらかすと荒廃するしかない山林を保全できることです。今後の可能性は、爆発的に利用者が増えるようなビジネスじゃないかもしれませんが、人がいることで山が守られていく、そういった場所が増えていくといいと思っています。」

森林の中で自由な時間を楽しめる(写真提供:稲田建設)
焚火は注意しながらやりましょう。(写真提供:稲田建設)

3 キャンプブームからのサバイバルブーム?

今回、森林レンタルの話を伺って、面白い!と思った。林業の衰退、森林の荒廃については何十年も前から指摘されているが、解決の糸口がなかった。そこに出てきた新たな発想だ。森林を遊び倒す想像力があれば無限の可能性が見える。

ただ、流域住民の場合、森林をレンタルしなくても近くにある、持っているという人ばかり。全国で展開される森林レンタルの場所と斜面地の多い四万十川上流域では条件が異なるので、ハードルが低くないことはわかった。だが、その違いを逆手にとって、ターゲット層や利用例を検討すると、一気に需要が拡がる可能性がある。まだ、始まったばかり、どんな展開になるか楽しみだ。メディアの取材依頼も続々と来ているようだが、暖かくなってから宣伝していきたいということだ。キャンプブームの次は、サバイバルブームか・・・?森林を利用する人、管理する人が楽しく増えていく未来を想像してしまった。

森林レンタルの希望者・問い合わせは「四国森林レンタルー集まれ四万十の森ー」のHPより↓

https://shikokushinrinrent.wixsite.com/my-site

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