清流通信319章、324章で四万十川産アオサ(ヒトエグサ)の不漁についてお伝えしてきました。
ヒトエグサの人工種苗生産の方法が分からないと話が見えてこないと思うので、こちらで紹介することにします。
- 1 配偶子放出、接合子板に付着
- 5月初旬に、去年まで育てていた養殖網のヒトエグサと天然のヒトエグサ(母藻)をとって、雌雄の「配偶子」を放出させる。雌雄の配偶子が接合し、「接合子」になったものを接合子板に付着させる。
- 2 成熟させる
- 近くの川から引き込んだ水を入れた水槽に接合子板を吊るし、9月中旬まで種苗センターで成熟させる。サイズは5㎛から50㎛へ、約10倍の大きさになる。
- 成熟が進むと、接合子が「遊走子嚢」に変化していく。遊走子嚢に粒が沢山見られることが多くの「遊走子」を放出できる証しになるので、大事なポイントとなる。
- さらに成熟促進
- 遊走子嚢の状態を確認し、9月中旬ごろに室温20℃に設定した暗室に接合子板を搬入する。2週間安置し、さらに成熟させる。
- 遊走子放出、養殖網への種付け
- ある程度成熟したら接合子板を暗室から出し、28~30℃に温度管理した水槽に30分から1時間ほど入れ、上と側面から蛍光灯の光を直接当て続け、遊走子を放出させる。
- その水槽内の水をスポイトでとって、顕微鏡で見て遊走子が沢山泳いでいることを確認する。
- 一定数の遊走子が確認できたら、遊走子を放出させた水槽の水を、あらかじめ水を張った別の大きい水槽に加えて希釈し、そこに養殖網を浸す。この時の遊走子の密度によって希釈する水の量を調整し、併せて浸す網の量も増減させる(例えば、遊走子が少なければ希釈する水の量と網の数を減らす)。
- 試験用のロープ片を入れて、遊走子の付着具合を顕微鏡で確認する。遊走子の付着密度によって、養殖網を浸す枚数を変えていく。
- 1晩そのまま養殖網をつけて置く。
- 漁師へ養殖網を渡す
- 次の日、注文枚数分の養殖網を漁師に渡す。
- その後、漁師のタイミングで川に網を張り出す。基本的に当日か次の日に川に張りだすことが多い。