自分たちでできる範囲で身近な水辺の環境を良くしていこうとする「小さな自然再生」の取り組みを発表するサミットが、5年ぶりに開催されました。今回は全国各地から30団体が集まり、それぞれの活動を共有し、意見交換しながら、交流を楽しみました。

エクスカーション

サミット1日目のエクスカーションでは、滋賀県彦根市・東近江市・野洲市における小さな自然再生の取り組みを視察しました。最初に訪れたのは、彦根市の犬上川。この川には、絶滅危惧種であるハリヨが生息するワンドがあり、その保全活動を行っているそうです。しかし、整備の際に誤ってワンド周辺の木々の伐採してしまい、日光が当たることにより水温が高くなるなどワンドの環境に変化が出るため、別の場所にワンドを整備しハリヨを避難させる、という取り組みを河川管理者とともに実施したとのことでした。かつての流路上にユンボで穴を掘っただけという低予算で整備ができたそうで、湧き水が出てきて無事にワンドが形成されたそうです。現在は元のワンドの環境も落ち着いてきたそうで、ハリヨを試験的に戻しているそうで、これには行政だけでなく大学も連携し、整備やモニタリングを進めたとのことで、教育の機会としても活用されているようでした。関係者間で「希少生物の生息環境を守る」という共通認識がちゃんと共有できている点は、大事なポイントだと思います。

次に訪れた東近江市を流れる愛知川では、ビワマスの保全のため、堰堤に簡易の魚道を設置した現場を視察しました。堰堤は砂防目的に作られたそうで、滋賀県内の川にはこういった堰がたくさんあるんだそうです。私たちの暮らしを守ってくれる一方で、堰は魚たちの遡上を遮断し、生息場所や産卵場所の減少にもつながります。こういった課題を解決するため、市民レベルでの魚道整備が盛んに行われているようです。今回の場所も、漁協、地元住民、県、調査機関、企業等たくさんの方が関わって実施したそうで、その連携力の高さに驚きます。魚道は単管パイプや樹脂製U字溝など、比較的安価に手に入るもので作成されており、大きな予算をかけずに設置することができるんだそう。設置期間は10月15日以降~3月頃までと、出水が少ない期間に限定されているそうですが、産卵に上ってきたビワマスたちが魚道を使って遡上し、堰堤のうえで産卵しているのが確認されるなど、確実に効果は出ているそうです。川にはビワマスの産卵床が無数にあり、産卵を終え息絶えた1匹のビワマスが水中に沈んでいる様子も確認できるなど、豊かな川の様子を見ることもできました。

最後に訪れた野洲川では、国交省の事業として簡易のバーブ工を整備し、アユの産卵床づくりが行われたということで、国道の橋の上から現地を視察しました。バーブ工はハの字型に石を並べて流れを堰き止めるような形で、水中カメラを設置してモニタリングを行っているとのことでした。バーブ工の設置によって流れに変化が生まれ、砂が堆積したり、掘れるところができるなど、生き物の生息環境が多様になることが期待されます。まだアユの産卵は確認できていないそうですが、今後の成果が楽しみですね。

どの事例も低予算で実施できるものであり、行政・河川管理者・大学・地元住民・企業が円滑に連携して活動できている点が印象的でした。四万十川財団でもできることを探して、小さな自然再生に挑戦していければと思います。

サミット当日

北海道から九州まで全国から集まった30団体が、持ち時間4分を使って、取り組みや熱い思いを発表しました。発表内容はご覧の通り。ブログではこの中から2つの事例を簡単に紹介したいと思います。詳しい資料はこちらにありますのでご興味のある方は、是非ご覧ください。

PDFファイルはこちら

・事例紹介1

四万十川流域で活かせそうな取り組みで印象的だったのが、栃木県立馬頭高等学校水産科の「小河川の雑魚爆増!竹束でつくる雑魚の大人気越冬地」という取組でした。伝統漁法の柴漬け漁の要領で、淵など魚の越冬場所になりそうなところに竹の束を沈め、黒いテグスを張るだけという大変シンプルながらインパクトのある効果が狙えそうな取り組みでした。

すぐにでもやってみたい事例ですが、ネックになるのは、河川法で定められた占有許可・一時使用許可を河川管理者から得られるかどうか…。いろいろなアドバイスや議論がなされており、大変勉強になりました。

・事例紹介2

福井県から参加した風土舎さんの「水の道再生プロジェクト ~伝統技法(しがら、ボサ、石積み)による手しごと治水~ 」も印象的でした。ご自宅の裏山が崩壊して、谷が土砂や木で埋まってしまい、そのままにしていると土中に大きな水道(みずみち)が出来て、新たな土砂災害を引き起こしかねないという理由で、谷の土砂を片付け、両サイドに石積みを築いた事例です。

昼食&ポスター等交流

お昼ご飯を食べながら、ポスターセッションが行われました。午前中に発表された方々と直に交流できる貴重な時間です。

午後の部はパネルディスカッションでした。タイトルは「小さな自然再生の次の一手を考える」です。第一部では、「小さな自然再生の技術(ハード)」をテーマに、第2部では「小さな自然再生の進め方(ソフト)」をテーマに会場も一緒になって議論が進められました。最初に登壇していた高校生2名の立派な受け答えにみな驚嘆していました。未来は明るいですね!

高知県からは、四万十川財団の理事でもある西山穏さんが発表され、パネルディスカッションにも登壇されました。高知市内の若草幼稚園が土木技術者の西山さんや園児のお父さん達と力を合わせて整備してきた「すくすくの森」という園児専用の里山体験フィールドの事例を深堀っていきました。こうした取り組みはケガをする危険性と隣り合わせですが、あまり整備しすぎず、最低限の安全とのバランスをとることの重要性が議論されたり、会場からの質問で「35年以上継続している活動なので卒園した人たちのその後はどうなっているのだろう?」という興味深い質問もありました。パネルディスカッションの内容はこちらにグラフィックレコードになっているので是非ご覧ください。

2日間、具体的な事例をたくさん知ることができ、大変勉強になりました。そして、「川の人達」が一堂に会して醸し出す自由闊達な雰囲気を体験できたことはとても貴重だと感じました。みなさんも機会があれば「川の人達」特有の雰囲気を味わってみてくださいね!