全国各地で行われている川の活動団体が一堂に会すワークショップに参加してきました。それぞれの活動を発表し、2日間にわたる選考会でグランプリが決定します。といっても、取り組みの優劣を決めるわけではありません。本WSの考え方は、基本的に以下に示されています。

コロナ禍で2年対面開催がかなわず、久しぶりに多くの人と再会できました。やはり、人に会って話すことがとても刺激になり、活力になりますね。それでは、前日のエクスカーションを含め3日間を振り返ります!

0日目:エクスカーション

エクスカーションは従来の見学会や説明を受けるタイプの視察とは異なり、訪れた場所で案内人の解説に耳を傾けながら参加者も意見を交わし、地域の自然や歴史、文化など、さまざまな学術的内容で専門家の解説を聞くと共に、参加者も現地での体験や議論を行い社会資本に対する理解を深めていく「体験型の見学会」です。

国土交通省中部地方整備局https://www.cbr.mlit.go.jp/kikaku/excursion/

エクスカーションでは、Cコースの埼玉県朝霞市を流れる黒目川と斜面林・湧水コースに参加しました。黒目川はベットタウンである朝霞市の台地の間を流れる川で、春には両岸に桜が咲き誇り、地元商店街による「花まつり」が開催されるほか、夏には様々な水生生物と触れ合いながら川遊びを楽しむ子どもたちでにぎわいます。そんな黒目川を今回案内してくれたのは、「黒目川に親しむ会」の小林さんと「朝霞環境市民会議」の明山さんです。

黒目川に親しむ会 小林さん(右)

黒目川に親しむ会は、川の清掃活動や、子どもたちへの環境学習、毎月1回の生き物調査等を行っており、この生き物調査でつかまえた魚は、黒目川の生き物を市民に知ってもらうため、商店街で展示されています。市民団体が河川整備に関わり、行政と協議しながら護岸の傾斜をところどころなだらかにすることで、川の流れに変化が生まれ、瀬と淵ができ、魚などの生き物も増え豊かな川になったこと、魚が増えたことで川に興味を持つ人が増え、釣り人も増え、川を大事に思う人が増えたんだと説明がありました。行政と市民が連携し、より良い河川整備を協議する体制ができているところに感銘を受けました。また、道中には黒目川に生息する生き物の展示もあり、水槽の中にはアユやオイカワ、ウグイ、ヌマチチブなどの四万十川でも見かける魚たちがたくさん。町中を流れる川にこんなに多種多様な魚が生息していることを知り、この川の豊かさを感じました。また黒目川では釣り人が自主的に話し合って釣りをする際のルールを決めたり、清掃活動も行ったりしているそうです。町中を流れる川にたくさんの魚が生息し、豊かな環境を守る人がいて、川沿いを子どもたちが通学する、そんな風景を作り出す素敵な取り組みだと感じました。

1日目:全体発表会・テーブル選考会

今年は全国(北海道~九州)から26団体が参加しました。コロナ禍もあり例年の三分の二くらいの参加数です。はじめに、各団体3分間のステージ発表が行われました。3分という短時間で全てを伝えることは難しいです。工夫を凝らした発表が楽しく集中して発表を見ることができます。特に、小学生や高校生、大学生が一生懸命発表している姿には感動します。若い人がいない・・・という四万十川の現状に対し、こんなに川への想いをもって活動している若者、子どもたちが輝いて見えました。

私たち四万十川財団の発表は「四万十川大人塾」についてです。昨年1年間の取り組みと、今年のバージョンアップについてを発表しました。今年のテーマは「とことん」なので、会場の皆さんにもとことんポーズ(大人塾の始まりと終わりに毎回やっています)をやってもらい、早足で企画の目的から内容、成果までを話しました。手応えは上々で、楽しく発表できました。

さて、テーブル選考では6グループに分かれて推しの1団体を決めていきます。4団体と選考員のみんなで、各発表の内容や課題を掘り下げて協議していきました。当財団は、都市河川の川づくりを行う花畑川、市民が広くつながって川の楽しさを伝えている乙川、子どもに川の環境教育を行う十勝川の皆さんとグループで、それぞれに熱い想いと課題を抱えていることが分かりました。どの団体も応援したい・・・、でも推し団体は一つということで、乙川が推薦されました。財団は、明日の敗者復活戦へ!

【一次選考結果】

乙川:ONE RIVER

鈴鹿川・安楽川・椋川:魚と子どものネットワーク

琵琶湖・大戸川・天神川:TNAKAMIこども環境クラブ

大岡川:(一社)大岡川川の駅運営委員会

四ツ谷用水:四ツ谷用水案内人

2日目:復活選考・最終選考

朝からポスターセッションによる選考でした。A1のポスターの前に発表者が立ち、選考委員へアピールしていきます。同時に他の河川の方々との交流も行う慌ただしい時間となりました。結果、6つの団体が選ばれ、なんと当財団もトップの票で最終選考に臨むことになりました!

最終の全体発表です。11の団体が1日目の発表で言い足りなかった部分を中心に発表していきます。これも3分間。財団は、とことんポーズを早めに終わらせ、内容についての補足を中心に話しました。どんな内容をどんな目的で行っているのか、また、昨年の塾生の成長など。予定していた課題の話まではできずでしたが、何とか伝わったと思います。

その後、2段階の選考でグランプリが決定されます。今回の発表に共通する点についてや、何を応援していくかなどの視点で討論が行われて、多岐にわたる活動から意見を集約し選考することが非常に難しいと思いました。

最終的に、グランプリは暗渠の失われた川の発信を一人で行う四ツ谷用水と子どもによる水防活動を18年行っている夕張川となりました。おめでとうございます。私たちは今なお残る川と人の文化を伝えようとする点が評価され、入賞することができました。「川の伝統文化を伝える人を増やすで賞」です。

【全体選考】

テーブル選考+

四万十川:(公財)四万十川財団

夕張川:リバーネット21ながぬま

埼玉県全域の水辺:埼玉県環境部水環境課

淀川・寝屋川:チーム寝屋川連携

芥川:芥川・ひとと魚にやさしい川づくりネットワーク

十勝川:本別アイヌ協会

終えて

グランプリにはなれませんでしたが、全国に川の取り組みを知ってもらう非常に良い機会であること、全国各地で奮闘する人々と交流できること、大きな応援をもらえることが財産として残りました。今回、印象に残ったのは、同じ川といえどそれぞれの「川」のあり方が異なることです。都市河川は、人工的に作られた河川であり、住民の川への認識が薄く、そこから川と人のつながりを作っていこうとする活動が生まれています。一方で、四万十川の住民は川を変えることができない自然の一部として捉え、この環境を繋いでいこうとする感覚が強いと感じます。それぞれの川に対する価値観も課題も全く異なります。それでも、川が好きだという想いでお互いを応援しあえる関係が素晴らしく心強いものだと感じます。

今回参加した河川団体の皆さん、また来年のWSでお会いしましょう。今回参加していない河川団体の皆さん、私たちと一緒に、来年の第15回いい川・いい川づくりWSに参加しませんか。

発表パネル