四万十川漁業振興協議会主催の「洪水前後の河床粒度分布調査結果からわかる四万十川の洪水中の土砂移動に関する報告会」に参加してきました。高知工業高等専門学校の岡田将治教授による報告会で、漁協関係者、土木関係の行政職員など30名ほどが集まっていました。

報告内容は大きく3点で、以下に概略をまとめました(文責:四万十川財団)。

1 スジアオノリの生育環境を維持・創出ができないか?(過去の検討成果から)

2 鮎の産卵環境を拡げられないか?(過去の検討成果から)

3 四万十川の環境を改善できないか?(四万十川漁業振興協議会からの委託研究 現在進行中)

(新しい技術の紹介) 宇宙から四万十川流域を監視する

1 スジアオノリの生育環境を維持・創出できないか?

現在、四万十川ではスジアオノリの不漁が続いている。河川工学の知見と技術を活用して解決できないかという研究だ。研究から、スジアオノリの生育可能な河床高がわかり、過去50年の土砂動態と実際の河床高、スジアオノリの生育分布の関係をみると、生育可能面積、収穫量がともに昭和50年代に多かったことがわかった。砂州を切り下げてスジアオノリの生育環境場の創出実験を行うと、スジアオノリが繁茂した。治水とスジアオノリの生育環境創出を両立させる河川改修方法については、上流からの土砂供給が増えても堆積しにくい河川改修にすること。中国の都江堰の例もあるが、流量と土砂の堆積を模型で実験し、本川左岸の導流提の形状の改修案を検討しているという。

2 自然の営力を活かしたアユの瀬づくり

アユの産卵場に適した環境を創出できないか?先生は四万十川に通い、鮎の産卵場を形成する河床・流況条件を抽出し、鮎の産卵場と貫入度、流速と水深の関係を調査した。その間に、「大墜」という産卵場の面積が増加しだした。その原因を調査すると、河川敷樹木の大規模伐採が関係してると推測された。伐採がある時とない時の条件で出水後の河床形状を解析すると、伐採があるときの方が産卵場に適した環境が創出されるという結果が出た。大墜の場合は、大規模伐採後も河川管理者の管理が続き、「入田ヤナギ林菜の花祭り」の開催に向けて人の手が入ることから、良い環境が維持され続けているのだろうという。

3 四万十川の環境を改善できないか?

ここからが現在四万十川漁業振興協議会と取り組んでいる内容になる。

四万十川漁業振興協議会では、令和4年度から河床改善に向けた調査を先生に委託した。西部漁協が試験的な河原の掘削を行い、先生がそこの洪水前後の粒径変化を調査したのだが、その評価方法に苦戦したという。検証には①河川の地形、②洪水の流量、③砂礫の大きさの情報が必要だった。特に、砂礫の大きさのデータ取得には新たな技術が必要で、ドローンの空撮画像による計測技術を開発したそうだ。その結果、30㎜程度の礫が移動することにより粗粒化と細粒化が上下流域で起きていることがわかったが、掘削による効果を確認するには至らなかった。今後、様々な規模の洪水で検証しなければならないという。

宇宙から四万十川流域の環境を計測する

2017年に無料利用可能になった欧州の地形観測衛星「センチネルー2」で、様々な観測を行うことができるようになった。このデータを使うと、たとえば四万十川の濁度を広い範囲で確認することもできる。小さい粒子がどこからやってきているのか、どこを改善すれば良いのかもわかるという。今後、より効果的な濁水対策が可能になるかもしれない。驚きとともに大きな期待を抱く報告会だった。

岡田先生、ありがとうございました。