景観生態学会徳島大会に参加してきました。はじめての参加でしたが、景観生態学という学問を通して地域の景観や暮らしを多角的に考えることができ、実りの多い1日でした。

午前の部 口頭発表

午前中は口頭発表とポスター発表が実施されました。口頭発表は2会場で同時進行となっており、私は地域の景観や土地利用をテーマとしたセッションを中心に聴講しました。

発表内容のテーマは多彩で、古民家の素材や構造から地域の特性を読み解こうとする研究、離島毎における土地利用の違いとその要因を考察した研究、景観生態学を地理教育へどのように取り入れることができるかを検討した研究などが紹介されました。

中でも特に印象に残ったのが、景観生態学と高校地理教育を結び付ける研究です。高校地理の教科書中に景観生態学のキーワードがどの程度登場するのかを調べ、地形や自然災害を学ぶ単元の中で景観生態学の考え方を取り入れることができるのではないか、という内容でした。景観生態学は、人と自然との関係を景観から読み解くという点で、文化的景観の考え方とも多くの共通点があるように思います。文化的景観を学校教育へ取り入れていく際にも、とても参考になる視点だと感じました。

午後の部 公開シンポジウム

午後は公開シンポジウムが開催され、徳島県西阿波地域を舞台に、「動く大地」の上で営まれてきた暮らしについて学びました。

ここでいう「動く大地」とは、地すべりが発生する大地のことです。西阿波地域では、古くから急傾斜地を利用した農業が営まれてきました。一般的には平坦な農地を造成したくなりますが、この地域では地すべりが起こることを前提としているため、大地を大きく削って平らにすることは避け、斜面の形状をそのまま生かした農地が広がっています。こうした土地条件に適応した農業や暮らしが独特の景観を生み出し、その価値が評価されて世界農業遺産にも登録されています。

興味深かったのは、地域の方々にとっては「大地が動くこと」は特別なことではなく、「その都度対応してきただけ」という感覚で暮らしているというお話でした。しかし、その積み重ねによって形成された景観は、外から見るととても特徴的で、美しく、世界的にも価値のあるものとして評価されています。
自然環境に逆らうのではなく、「大地は動くもの」という前提で暮らしを築いてきたことが、現在の景観につながっていることを発表を通して理解することができました。

また、シンポジウムでは、祖谷地域の取り組みについても紹介されました。祖谷地域はジオパークにも認定されており、「大地」をテーマにした観光ガイドが行われているそうです。

ガイドでは、美しい祖谷の景観を単に「絶景」として紹介するのではなく、その背景にある地質や地形との関係をわかりやすく解説しているとのこと。例えば、集落が立地する場所は比較的脆い地盤である一方、大歩危・小歩危のような壮大な渓谷は硬い岩盤によって形成されています。そして、硬い岩盤の地域は人が生活するには適さないため、人の手があまり加わらず、観光資源となる豊かな自然が残されてきました。「景観」を見るだけでなく、「なぜその景観がそこにあるのか」を大地から読み解く視点は、とても新鮮だと感じました。

四万十川流域の文化的景観では、「大地」という視点から景観を説明することがあまりできていなかったように感じます。今回のシンポジウムを通じて、地形や地質と人々の暮らしとの関係を知ることで、景観の見え方が大きく変わることを実感しました。

景観は、自然と人との関わりの積み重ねによって生み出されるものであり、その背景にある「大地」に目を向けることで、景観への理解をさらに深めることができるのだと感じました。今後は祖谷地域のガイドやジオパークの取り組みについてもさらに学び、四万十川流域の文化的景観を伝える際にも、新たな視点として取り入れていきたいと思います。