令和3年度報告会では、2020年冬に大量死した鮎から温水病・エロモナス症が浮上し、新たに冷水病以外の病気にも注目していく必要性が示唆され、それに伴い、親鮎放流の是非、冷水病による親鮎産卵の影響評価を行いたいとしていた。

今年度の報告では①今年の産卵鮎の病気について、②そこから見える中流鮎について、③ボケ病と冷水病菌について報告があった。

目次

①今年の産卵鮎の病気について

2022年11月にアユ検体採取を3回行った。外見からの所見ではヒレの発赤が最も目立った。冷水病陽性率は例年と同じく11月から上昇したが、冷水病のDNA量は11月下旬では例年に比べて10分の1で、今年の冷水病の流行規模が小さかったことがわかった。

2020年の大量死の原因だと思われるエロモナス菌の今年の陽性率は、11月上旬は例年通りだったが、下旬になると下がった。DNA量は例年と差がない。今年度は親魚放流をおこなったが、この結果が得られたため、親魚放流の有無で差が出ることはない。しかし、今の段階では、2020年の大量死が起きた原因はわからないままである。

生殖腺の熟度指数をみると昨年よりも良好な産卵活動であったと推定される。病気が原因で抱卵した状態で死亡している鮎がいると増殖につながらないため、未産卵の鮎を調査するなど、今後も重要な課題である。

温水病の陽性率は昨年よりも高く、菌のDNA量も高量のため、来年度(令和5年度)は例年にない夏場に温水病流行の可能性がある。

②そこから見える中流域鮎について

2022年8月に鮎が大量死しているという報道があり、中流域の鮎を検査した。鮎の体内には血液混じりの腹水、腎臓からはエドワジラ・イクタルリ菌(温水病菌)が見つかった。しかし、死んだ鮎の温水病陽性率は100%ではなく、外観に症状が現れている個体が少なかった。つまり、温水病だけでは説明できない死亡事例だと思われる。

水温に着目すると、25度以上の高水温が続いており、高温障害(酸欠)と温水病が重なった可能性がある。高温障害には今後の定義づけが必要で、高温障害に関わるであろうヒートショックプロテインに注目したい。

8月に斃死した鮎に線虫が見つかった。最新の論文で発表されたばかりのククラニド線虫と同じであった。この線虫の最終宿主は他にいて鮎を媒介にしていると思われる。夏場に中流域で寄生を受けているかもしれない。

③ボケ病と冷水病菌について

・ダム直下の鮎放流はボケ病のリスクが高くなる傾向がある。四万十川はもともとダムが少ないこともあり、ボケ病リスクが低い。放流する際は、場所に注意する必要がある。

・冷水病と言えばフラボバクテリウム・サイクロフィラムという菌だとされていたが、実は仲間がたくさんいる。アメリカのサケマス養殖場で冷水病と同じ症状の病魚からサイクロフィラムでない菌が確認された。これからは冷水病の症状だとしても他の菌の可能性があると新しく考えていくべき。

まとめ

・今年の親鮎間の冷水病の流行規模が小さかった。昨年よりも良好な産卵活動となった。

・親魚放流によるエロモナス症リスクは不明。

・温水病菌の陽性率が高かった。夏場の温水病流行の痕跡の可能性がある。

・ククラニド線虫の寄生率が高い。夏場に上流で寄生しているかもしれない。

質疑応答

当財団(丸石)

「最後に冷水病菌は様々いると言っていたが、放流鮎からまた新種の冷水病菌が流入する危険性はないのか?」

今城先生

「現在の冷水病のように川で拡がるものかわからないが、一過性の感染が発生する可能性があるかもしれない。」

西部漁協

「四万十川の河床環境が悪化している。西部漁協で試験的に河床掘削を行い河床環境改善に向けて研究している。砂利が下に流れる状況を作れば水温を下げることができるのではないか?河床環境と水温は関係しているのではないか?四万十川の実態をみんなで解決し、川の環境を改善していくべき。」

今城先生

「川の環境は水温に影響することは間違いない。河川環境も視野に考えていく必要がある。」

東部漁協

「四万十川全体として鮎の病気は考えて解決していく必要があると思う。今後とも皆様よろしくお願いします。」

今城先生は、冷水病をはじめ鮎の病気は水温に大きく影響されると強くおっしゃっていた。水温変化に私たちが手を加えることは難しい。それ以外のリスクを軽減していきたいと強く思う。特に放流鮎の扱い方には毎年新しい見解が入ってくる。2023年2月には「放流しても魚は増えない」という衝撃的なタイトルの論文が発表された。増殖義務として放流をしなければならない現状、放流の方法、よくよく検討していくべきだと思った。

放流しても魚は増えない~放流は河川の魚類群集に長期的な悪影響をもたらすことを解明~(地球環境科学研究院 助教 先崎理之)↓

https://www.hokudai.ac.jp/news/2023/02/post-1173.html