いのちをつなぐ水と流域 地球市民フォーラム in Tokyo2025に参加して勉強してきました。場所は東京青山の国連大学 ウ・タントホール。四万十川財団は、流域連携で四万十川の保全と流域の振興の仕事をしています。国内の流域治水を含む流域連携の考え方、ヒント、さらには国際的な視点からの流域圏の取り組みが今どう動いているのを学び、四万十川での活動をアップデートするためです。

内容・プログラム(当日のリーフレットから)

持続可能な社会の構築に向けて、私たちのいのちをつなぐ水と、生活の場としての流域を見つめなおし、広く、「水と環境・水と生業・水と文化」の視点から水と暮らしの未来について考えます。
 本フォーラムでは、水と人の付き合い方や流域の上下流の関係に迫りながら、水と共に生きる人々が流域圏でつながる新たな「いのちの物語」を検討し、新時代に育むべき共生の知恵を模索します。そして、大阪・関西万博で国際的に提唱する100年後の人類社会の未来像を描くヒントを見出だします。

【第一部】
基調講演Ⅰ 「東京湾流域圏の成り立ち:その恩恵と試練」
巽 好幸 ジオリブ研究所 所長、神戸大学 名誉教授


基調講演Ⅱ「水災害レジリエンスとサステナビリティ -by Allによる自律分散協調社会-」
小池 俊雄 国立研究開発法人土木研究所 水災害・リスクマネジメント国際センター〔ICHARM〕センター長、東京大学 名誉教授

【第二部】

13:40 パネルディスカッション1「東京湾から発想する『水と流域圏』Well Beingへの道」


  コーディネーター:町田 誠 イベント学会 理事、横浜市立大学大学院 客員教授
  パネリスト:
   山名 清隆 ミズベリングプロジェクト プロデューサー 
   後藤 洋一 NPO樹木・環境ネットワーク協会 理事・事務局長
   福井 恒明 法政大学デザイン工学部 教授
   田中 里佳 国土交通省 水管理・国土保全局 治水課 流域治水企画官

【第三部】
 1.ポスター発表PRタイム
 2.ポスター発表コアタイム

【第四部】
16:40 パネルディスカッション2「世界における流域圏の取組み」
コーディネーター(問題提起):廣木 謙三 政策研究大学院大学 教授 
パネリスト:
 三和 伸彦 〔公財〕琵琶湖・淀川水質保全機構理事長、滋賀県理事員(琵琶湖政策・MLGs推進担当)
 川崎 忠成 独立行政法人 水資源機構 総務部広報課 課長補佐
 横田 妙子 国際連合地域開発センター〔UNCRD〕水と災害に関するプロジェクト専門家
 野田 岳仁 法政大学 現代福祉学部・大学院人間社会研究科 准教授


長く密度の濃いフォーラムだったので、すべてをご紹介することはできませんが、せっかくなので最初の巽先生の基調講演だけざっとご紹介します。

関東平野は、ご承知の通り、坂東太郎利根川をはじめとする河川が東京湾へ流れ込むことでできています。では、その流れ込みの原因となる東京湾はどうしてできたのかというと、フィリピン海プレートが日本列島に潜り込み、それが跳ね返ったとき大地震を引き起こすことは皆さんご存知だと思いますが、跳ね返った先端は隆起する、と同時にその裏側で実は凹地ができている。東京湾はその凹地で、実は巨大沈降帯なんだそうです。

東京湾に流れ込む川は周囲の火山灰を含む土を堆積させ、関東ローム層が形成されました。ちなみにですが、いまだに教科書に「関東ローム層が富士山の噴火でできた」と書いてあるが、あれは誤りだとのこと。それから、この流域には秩父、葛生といった石灰岩地帯がありますが、その影響で関東近辺の水は硬度が高い。いわゆる中硬水になります。関西はこれに比べて軟水で、昆布のグルタミン酸をよく溶かし出す。だから、いい出汁がとれる。硬水は溶けているカルシウムがフコダインと結びついてしまって、いい出汁にならない。昆布出汁はとれないが、硬水はアク取り上手くできるので、動物質の出汁を取るのが得意。だから鰹出汁が好まれる。また、硬水を使うと発酵が進みやすいので、千葉の濃い口醤油が生まれた(発酵が進みにくい軟水の関西は、例えば竜野の薄口醬油になる)。それが料理のベースになっている。

では、食材はというと、江戸という大都市ができたことで、大量の食材が全国各地から持ち込まれるようになった。米は天領から、魚介類は東京湾から。ところが、野菜だけは遠路持ってくるものではない。結果、江戸野菜を作る近郊農業が発達したが、先に述べた関東ローム層はリン(P)が吸収できない形になっていて、農作不適格土(蕎麦だけはこの土でもできるので、江戸は蕎麦文化になった)だった。これを5代綱吉が武蔵野台地改良事業で改善していった。具体的には、①下肥利用②金肥(干鰯)③柳沢吉保の堆肥農法などなど。

巽先生の『「美食地質学」入門~和食と日本列島の素敵な関係 (光文社新書 )』を読んだ時も面白いと思いましたが、ご本人の肉声で聞くと、また格別に面白いですね。

他にもご紹介したいことが沢山ありますが、それはまたいずれかの機会に。