高知県森と緑の会が企画する「春の春分峠を歩こう」に参加してきました。春分峠とは梼原町松原と四万十町松葉川を結ぶ峠道です。今回はその峠にある久保谷山を歩きました。

今回案内を務めてくれたのは、高知県で森の人といえばこの人、森下嘉晴さん。森林管理署の職員で、四万十川流域の森林を歩き、絵地図を作ったりしているとんでもない方(最大級の誉め言葉です)です。またそのほかに地元松原地区の区長さん、森林インストラクターの方2名がガイドをしてくださいました。森下さんにとっても松原の山は特別な山なんだそう。一体どんな風景が広がっているのか、楽しみです。

この日の天気はあいにくの雨。しかしそのおかげで森の中には白く薄い霧がかかり、幻想的な風景を見ることができました。久保谷山は風景林にもなっている美しい天然林で、さまざまな木々を見ることができます。入ってすぐに見つけたのは、アセビという木。馬酔木と書き、漢字の通り、馬がこの葉を食べるとその毒で酔ったように足がふらついてしまうのだそう。昔はダニ除けにも使われていたそうです。そのほかに樹皮が鹿の子どものような模様をしたカゴノキ、シイタケの原木に使われる椎の木、大きな葉っぱが特徴的なホオノキなど、たくさんの木々を観察することができました。また、久保谷山はシャクナゲの群生地であり、時期になるとたくさんのシャクナゲが花を咲かせます。この時はすでにピークが終わり、数輪が残るのみでしたが、2週間前ほどに見ごろを迎えていたそうです。またその頃に来てみたいですね。

久保谷山の見どころは、何といっても巨大なアカガシです。アカガシは固いためあまり利用されず、切られることなく残されたので、そこかしこに巨大なアカガシが残されています。道すがら現れる巨大なアカガシの存在感は圧倒的で、ついつい立ち止まってカメラを向けてしまいました。特に見ごたえのあるのは、双子のアカガシ。2又の形をしており、幹が太くて大きくてもう圧倒されます。思わず拝みたくなる、そんな木です。この木は森下さんも大好きな木の一つなんだそう。2又に伸びた幹をバックに記念撮影もできます。みなさんもぜひ行かれた際はこの巨木をバックに記念写真を撮ってみてくださいね。

さて、今回のイベントの目的は春の久保谷山を観察することでもありますが、もう1つ、天然林と人工林の違いを見ることにもありました。春分峠から久保谷山を歩いていくと、途中、右側がスギヒノキの人工林、左側は天然林が広がっているエリアがあります。適度に間伐された針葉樹林からなる人工林と、さまざまな広葉樹林が交ざる天然林の違いは一目瞭然。異なる二つの景色が一度に見られる山は珍しいのではないかと思います。天然林は人があまり入らず、自然のサイクルの中で豊かな森林環境を維持しています。自然の力だけでこんなに豊かな生態系が維持されていることに、改めて自然の力の偉大さを感じます。一方人工林の維持には人の管理が必要で、大変な労力がかかります。天然林は一連のサイクルの中でそれが全部うまくいっているというのはやっぱりすごいですね。

人工林と天然林の違いを見た後は春分峠の入り口まで戻ります。復路は来た道を帰るコースと、ヒノキの巨木群が見られる中級者コース(地獄コース)に分かれて戻ることに。私(羽方)は山登りにも慣れていない初心者なので、迷わず来た道を戻る天国コースを選択。(無理は禁物ですよね。)帰りはゆっくり植物を観察しながら、無事春分峠まで戻ることができました。一緒に行ったもう1人のスタッフは地獄コースに行きましたが、巨大なヒノキが何本も立っていて景色もすごかったそうです。みなさんもぜひ春分峠で巨木の生命感を感じてみてください。