芝 直樹(しば なおき)

芝 直樹さんの基本情報
・十和地区 十川出身
・専業川漁師だったお祖父さんについて川漁を学ぶ
・昭和55年生まれ
・全国障害者スポーツ大会のフライングディスク・砲丸投げ・ソフトボール投げで金・銀・銅メダルを獲得。
芝 直樹さんってどんな人?
先月の大人塾番外編シャクリ竿づくりで、材料となる「川竹」があるところを教えてくださり、一緒に取りにいっていただいたのが芝さんでした(↓↓)。講師の村井さんにシャクリ漁やシャクリ竿づくりを教えたのも芝さんだったそうです。どうして、そんなに漁に詳しいのでしょう。そこにはお祖父さんの存在がありました。
一緒に暮らしていたお祖父さんが、なんと、現在では珍しくなった専業川漁師だったそうです。幼少期から、そのお祖父さんにくっ付いて、川漁を学んだそうです。どおりで詳しいわけです。


昭和3年3月3日生まれの祖父・芝覚太郎さんは、平成16年に享年・76歳で亡くなられました。夏はアユやウナギを獲り、冬は投網や投げ網を作ったり、竹籠も編んで生計を立てていたそうです。お願いして覚太郎さんの見事な竹籠を見せていただきました。芝さんは、現在でもこれらの竹籠を大切に使われているそうです。



十和の専業川漁師がどんな漁をされていたのか、興味津々になりました。朝は7:30くらいから友釣りに行き、お昼には一旦家に戻って昼食をとって、午後からウナギのヒゴヅリや投げ網に行かれていたそうです。十和では珍しい「投網の舟打ち」も行っていたそうです。面白いな思ったのが、注文を受けて行くコイ釣り。河原から釣ったり、舟で釣ったり、増水した時には「ニゴリクミ」でもアユと一緒にコイを捕ったそうです。捕ったコイは「あらい」にして食べるのだそうです。
芝さんの部屋には、お祖父さんから教わった漁に関するメモ書きがあり、文字おこしさせていただきました。大人塾でリバーマスターから教えてもらった基本的な内容もありますが、現在のリバーマスターを育ててきた世代の言葉には重みや竹などの自然素材をうまく活用する知恵を感じます。
・アバは綺麗に繰っていく事。
・両手投げは左手に3、右手に7の割合で手縄を握る。
・片手投げはアバやイワを綺麗に繰ってから放る。
・どっちで投げる時もアユの群れより少し沖へ投げる。
・白い網は、アユに見えにくいように柿渋で染める事もある。
・コロバシは孟宗竹を取ってきて、3週間くらい干して油抜きをすると良い。
・シャクリ竿は川竹の3年ものを使う。節の間が長く、なるべく真っ直ぐなものを使う。1年ぐらい乾燥させて、その後、炙って油を抜いたり、曲がりをとる。川竹の他、男竹や破竹でも良い。
生まれつきの障害とスポーツ
実は、芝さんには生まれつきの下半身の関節障害があります。でも、お祖父さんについて回ったお陰か、まったく障害を感じさせない逞しさがあり、小学生時代には毎日遅くまでソフトボールに励んでいたそうです。
旧・十和村地区はソフトボールが盛んで、村内の小学校だけで11チーム以上ありました。実は、筆者・中平と芝さんは同学年。学校は違いますが、ソフトボールの大会ではよく対決していました。足は障害があるため、ほっそりされていましたが、逆に上半身はがっしりとして、二の腕の力こぶが今でも印象に残っています。
平成20年に大正地区に「やまびこ」という作業所ができると、設立当初から通うようになり、現在では27名いる自治会の副会長もされているそうです。なんでも、17年も務めている芝さんがいないと、回らない仕事がいろいろあるそうです。お祖父さんについて川で遊んだ経験が活かされているのではないかと感じました。川漁はいろいろなスキルを必要とします。それを幼少期から遊びながら自然と身につけてこられたんだと思います。
転機が訪れたのは、作業所に勤めだした翌年。アスリートとして活躍し始めることになります。平成21年に新潟県で行われた全国障害者スポーツ大会へ参加してみたところ、なんといきなり、ソフトボール投げ44mで銅メダル、砲丸投げ7m13cmで銀メダルを獲得されたそうです。その後もいろいろな大会に参加し、部屋にはたくさんのメダルが保管されていました。



その後も令和6年の佐賀大会では、投球の正確さを競うフライングディスク(アキュラシー)で金メダルを獲得し、令和7年には高知県スポーツ協会から優秀賞をいただいています。さぞ、練習に励んでいるのかと思いきや、特に何もしていないそうです。やはり川漁が自然な鍛錬になっているのかもしれませんね。
取材を終えて…
ここでは、建前上、「芝さん」なんて呼んでいますが、実際には同じ十和地区の同学年なので、「なおき」と「みったか」と呼び合います。私が投げ網漁を始めた頃、破れた刺網の直し方を教わりになおきの家に行ったことがあります。その帰り道、「袋網もっちょうか?」と声をかけられ、袋網をくれたことがあります。彼は、そんな気前の良さと優しさを持ち備えています。その袋網は現在でも大切に使わてもらっていて、偶然、昨日もその袋網を持って、犬の散歩がてら川へ出かけていました。※妻に撮られていました↓↓↓

3年ぶりくらいに訪れた彼の部屋には、作りかけの袋網があり、現在、作り方の研究をしているそうです。財団でも投げ網づくりの企画がありますが、そのとっつきにくさからまだ実現していません。今後とも同学年として切磋琢磨しあい、協力しあえたらと思っています。よろしくね!