全国文化的景観地区連絡協議会 葛飾柴又大会1日目 その1からの続き

基調講演に続いて、地元葛飾柴又、琵琶湖からは東近江市伊庭、そして長良川から岐阜市から、それぞれの魚食文化の事例紹介がありました。

「葛飾柴又における川魚の食文化」天宮久嘉氏

はじめに、開催地葛飾柴又の川魚料理屋「川千屋」のご主人 天宮久嘉氏から「葛飾柴又における川魚の食文化」と題して、江戸川近辺を例に東京の淡水魚職について事例紹介がされました。江戸も中期以降になると庶民が郊外を散策する文化が生まれてきて、柴又は「江戸川の幸を楽しみに行くところ」という位置づけでした。氏が特に力を入れて説いていたのが鯉についてで、かつては祭りや祝いの席に欠かせないものでした。実はわが四万十川でも下流の中村では正月料理で鯉のこもぶり(鯉のおつくりに炒った鯉の卵をまぶしたもの)がなくてはならないものだったと言います。川千屋さんには鯉こく(鯉の味噌仕立ての汁もの)を食べるためだけに遠方から訪れるお客さんもいるそうです。

東近江市 嶋田直人さん「琵琶湖の内湖の湖魚食文化と文化的景観」

2番目の事例発表は東近江市の嶋田直人さんの「琵琶湖の内湖の湖魚食文化と文化的景観」でした。3年ぶりの対面での全国文化的景観地区連絡協議会です。昨年は長野県飯山市がウェブ開催、一昨年はコロナで延期でした。毎年のように顔を合わせていた面々も異動で大分入れ替わっていて、5年を越えるメンバーは私たちを含めて両手で足りてしまいます。時の流れを感じます。嶋田さんはその一人で、毎回この会でお会いして親しくお付き合いいただいています。前回山形でも同じ電車、今回は宿まで同じ、それも隣の部屋。それはともかく、琵琶湖のすごさは「おかずの魚とり」が今も日常的にみられるところです。「おかず」にする魚種も豊富で、ホンモロコ、スゴモロ、コ、オイカワ、アユ、フナ、スジエビ、シジミ・・・すごいですね。料理法もバラエティーに富んでいます(上に添付した資料の16ページ~19ページ参照)。文化的景観ツアーのお客さんにかならず川魚料理を食べてもらっているあたりの三方よしもさすが。

岐阜市 河合一希さん
「長良川中流域における岐阜の文化的景観と川魚の食文化」

3番目は岐阜市の河合一希さんの「長良川中流域における岐阜の文化的景観と川魚の食文化」です。河合さんは今年から景観の担当になったそうですが、事例発表のためにまず自分がアユ料理を一通り食べてみるところからはじめたという真面目な人です。長良川といえばやはり鵜飼い、鵜匠ですが、鵜匠家独特の料理もあるそうで、ぜひ食べてみたいなと思いました。

身近にいるのに意外に見過ごされがちな淡水魚食の魅力を再検証していく作業、もっと深めていく必要性を感じました。四万十川もお役に立てるはずです。