冷水病をはじめとする鮎の病気は全国の河川で発生しており、その現状把握と対策は喫緊の課題だ。四万十川では数年前から四万十川漁業振興協議会(四万十川漁業協同組合連合と四万十川上流淡水漁協、四万十市、四万十町が加盟)が高知大学の今城雅之先生に調査を依頼している。

 報告会に参加してお話を聞いてきた。

 2020年11月に、四万十市赤鉄橋付近で鮎が大量に死んでいた。ここは産卵場のすぐ下流なので産卵を終えた鮎の亡骸が毎年多くみられるが、この時の死骸には産卵前の親鮎も多く見られた。検査の結果、温水病(エドワジエラ・イクタルリ感染症)やエロモナス症という病気も浮上した。今まで冷水病ばかりに気をとられていたが、他の病気の蔓延も判明し、今後これらも視野に入れた調査が必要となった。

温水病は、水温25~30度の渇水期に発生。鮎の体表に斑点が見られ、腹水や肛門の発赤もみられる病気だ。エロモナス症は水温21~25度で発生。体表や下あご、鰓基部に出血が見られ、腹水も見られる。この2つの病気は20度以下で発生する冷水病と並び河川鮎の3大疾病と言われていて、それぞれ流行する水温帯が異なり、もうこうなると鮎の安心できる水温はない。

 今城先生は今現在「冷水病の親鮎産卵活動に対する影響の評価」と「親鮎放流の是非」の2点を明らかにしようとしている。2020年の親鮎大量死の原因はまだ明らかになっていないが、親鮎放流直後の大量死だったので、因果関係が疑われる。そのため、放流親鮎が産卵に与える影響を調べ、その是非を明らかにしたい。

 今年は産卵期の10月末から11月末に特別採捕を実施し、獲れた鮎を調査した結果、明らかになったのは以下の2点だ。

1,産卵親鮎の冷水病菌陽性率は11月に入ると高くなる。
2,11月下旬の産卵親鮎の保菌量は発症・死亡魚に匹敵。

PCR検査をしたところ、10月28日に獲れた鮎74匹の冷水病菌陽性率は0%だったが、10日後の11月8日を見ると80匹中68匹が陽性、11月22日には80匹中79匹が陽性だった。さらに冷水病菌のDNA量を調べると、11月8日の段階では10の3乗のオーダーだった(数千の単位だったということ)ものが、11月22日には10の4乗オーダー(万の単位になったということ)に跳ね上がっており、これは冷水病の発症・致死レベルに達してしまっている。

 また、2020年に確認された温水病とエロモナス症の原因菌の保菌状況についても調査して、特にエロモナス菌について気になることが分かった。11月17日、22日ともに陽性率は高かった(46/53、24/24)ものの、2020年の大量死の時と比べて菌のDNA量が二桁程度少なかったのだ。実は、エロモナス菌といってもいろいろあって、最も一般的なのがエロモナス・ベロニ菌といい、これとは別にエロモナス・ハイドロフィラという菌もあって、先生はこの二つをきちんと分けて把握しないと正確な現状が掴めないのではないかと考えておられるようだ。

参加者たちの反応

「今年は11月23日ごろまでいた鮎が落ちアユ漁再解禁12月1日に忽然と姿を消した。原因として3つあった産卵場所が1つつぶれてアユが密集する状態になったことが考えられないか。11月中旬に産卵が集中して、感染症が爆発的に広がったのではないか?産卵ピーク前に(感染爆発が)おきていたら四万十川の鮎が全滅していた。」

「感染症に強いのは小さい個体か?死亡率が低くなると言われているが。」
→(今城先生)
「感染症に大きさは関係ない。小さい方が数の理論で死亡率が減っているだけでしょう。」

「放流鮎と天然鮎で保菌数に差があるのか?」
→(今城先生)
「差はない。検体数が少ないので、はっきりとした答えが出せないところではあるが、産卵前に死ぬ鮎が多いと思う。それが冷水病で死んでいるかがわからない。自然死ではないと思うが、データ化していきたい。」

今後の課題と期待

今後も研究を続けていく中で、産卵前の鮎が病気でどれだけ死んでいるのか、それがなんの病気なのかを明らかにしていくという課題がのこった。精度をあげるために必要な検体数がまだ少ない。来年も四万十川流域の人々の協力が必要だ。

鮎が無事に産卵し、次の年も資源量を維持できる環境であることが重要だ。今の四万十川ではそのサイクルが正常に働いているのだろうか。放流による影響はあるのだろうか・・・。今後の研究に期待が高まる!