川漁をする権利

 昔は、漁業権などなくみんなが自由に魚を獲って食べていた。それが変化しだしたのは江戸時代ごろから。近代技術の発達によって漁法が進化し、漁場をめぐる争いがおこるようになって、正式に「漁業法」が作られ様々な取り決めが行われたのだった。

 漁業権とは、その名の通り、漁業をする権利である。簡単に言うと、水産物を獲ってそれを自分の利益のために使用しても良いですよ、でも、みんなのものだからルールを守りましょう、ということなのだ。そのルールは、都道府県や各漁業協同組合が作っている。

四万十川にも、もちろん、漁業権がある。その漁業権について、どういう仕組みになっているか説明しよう。難しいので、飛ばして読んでもらっても構いません。

漁業権と四万十川 

漁業権には、様々な形式がある。漁業は、水面全般に関わるので、川だけでなく、海や湖、池なども対象となる。その水面で行う営利目的な採捕や養殖のことなので、様々な漁業権の種類がある。少々複雑なので、四万十川に関わる部分だけ紹介する。

漁業権の図を見てほしい。四万十川は、内水面(一部を除く河川・湖沼のこと)であるから、大半の漁業は、第5種共同漁業権に分類される。この免許を受けるのは、漁業者個人ではなく、「漁業協同組合(以下、組合)」である。組合は漁業権の管理を行うが自らは営まず、組合員が行使規則等に従い漁業を権利として営む。これを組合管理と呼ぶ。組合の運営については、規則があり法律に基づいて運営されている。つまり、四万十川の漁師は、組合に加入することで、組合を介して漁業権を得て漁業をしているのである。

四万十川の大半の漁業が、先述した第5種共同漁業権であるが、それに該当しないものもある。主に、アオサノリ漁やシラスウナギ漁などだ。

下流のアオサノリ漁は、特定区画漁業権に属する。これは、先述の第5種共同漁業権と同様に組合管理となる。

シラスウナギ漁は、特殊で、漁業権ではなく許可漁業に属して行われる。許可漁業とは都道府県ごとに許可される漁業である。高知県の場合は、高知県知事の許可が必要だ。シラスウナギ漁以外にも、火光を使った漁(火振り漁など)やまき網など知事の許可が必要な漁業がある。

 漁業権を使って漁をする人たちは、様々なルールを守って漁をしなければならない。四万十川では、高知県が公布する高知県漁業調整規則と、組合ごとに作成される行使規則の2つがある。規則違反の場合には罰則があるので、しっかりと理解して漁業をしなければならない。高知県漁業調整規則は高知県のHPから参照可能だ。行使規則は許可を受けている組合に聞くと分かるが、組合員になるときや遊漁券を購入する際に説明を受けるはずである。

なぜ、川で釣りをするために遊漁券がいるの?!

海では、ほとんどの場所で自由に釣りができるのに、川では「遊漁券」を買わなければいけない。これを不思議に思った人もいるだろう。その答えは、漁業権の中にある。

内水面の漁業権である第5種共同漁業権は少し特殊だ。この免許は、水産資源の保護と国民のレクリエーションを維持するため、その水面が増殖に適した環境であることと、漁協は必ず増殖を行うことを条件に免許される。この増殖義務の見返りとして、遊漁規則を定めて遊漁を制限し漁場管理と増殖費用に充てる遊漁料を徴収できるのだ。

この点が海の漁と全く異なる点である。なので、川で釣りをする場合は、基本的に遊漁料を漁協に支払い遊漁規則を守らなければいけないのだ。漁協によって規則や遊漁料も異なるので、確認が必要だ。

四万十川の漁協と魚族保護会の今

 四万十川には四万十川漁業協同組合連合会(漁連)と上流淡水漁業協同組合、津野山魚族保護会の大きくは3つの組織によって漁業が管理されている。漁連には、下流、中央、西部、中央の4つの漁協が属している。津野山魚族保護会は、梼原支部と津野支部の2つから成る。つまり、細かく分けると7つの団体が存在している。川にこれほど多くの漁業管理団体が存在するのは四万十川くらいではないだろうか。逆に言えばこれだけ多くの団体が管理する必要があるほど、多くの人が川で漁を行っているということで、四万十川の漁業の豊かさや多様性が現れているともいえる。下流から上流までの約196キロで、各団体の川との関り方や生活、考え方が少しずつ異なってくる。

今回はこの7団体の今を紹介しつつ、現在の四万十川の状況を川漁という目線からひも解きたい。取材では、各団体代表にインタビューを行った。インタビュー内容は、下のリンクからご覧ください。

四万十川下流漁業協同組合
山﨑組合長(右)、事務員竹山さん(左)

四万十川の最下流にある漁協。アオサノリやアオノリをメインにしている。

四万十川中央漁業協同組合
堀岡組合長(右)、事務員山口さん(左)

四万十市中村に位置する漁協。四万十川の赤鉄橋付近は、四万十川全鮎の産卵床になっている。「落ち鮎」文化の地域。12月1日の落ち鮎解禁日は最大の盛り上がりをみせる。

四万十川西部漁業協同組合
金谷組合長(右から2番目)、事務員吉福さん(左から2番目)、鮎市場長平野さん(右端)

四万十市西土佐に位置する四万十川中流域の漁協。「鮎市場」という独自の販売事業を行い組合員の川魚の買取と販売を行っている。鮎の塩焼きを実演販売し、観光客も集まる。

四万十川東部漁業協同組合
武政組合長(左)、事務員久保さん(右)

四万十町の十和・大正地域に位置する四万十川中流域の漁協。友釣りのメッカであり、多くの釣り師が訪れる。夏鮎の量が盛んで、鮎の漁獲量は四万十川で一番かもしれない。

四万十川上流淡水漁業協同組合
池田組合長(左)、事務員谷口さん(右)

四万十町の窪川地域と中土佐町の大野見地域に位置する四万十川上流域の漁協。四万十川漁業協同組合連合会には属さず、単協でやっている。鮎の入荷・販売を行っている。生鮎の販売がメイン。

津野山魚族保護会
津野町魚族保護会 豊田会長
梼原魚族保護会 影浦会長

津野町と梼原町の河川団体。漁協ではないが、鮎をはじめとした川魚の保護や遊漁券の販売を行っている。四万十川源流域の北川、梼原川、四万川を活動場所としている。

四万十川の漁協と魚族保護会から見る四万十川

四万十川196キロにわたって、様々な文化と生活があり、考え方や獲る魚、川の見方も違ってくる。しかし、川はつながっている。上流で起きたことは下流にも伝わっていくのだ。下流の人は、川を見て上流の異変に気づくことがあるという。上流の人はも下流の人に対する責任を感じている。

どの団体にも共通する課題と想いがあった。四万十川を良くしていきたいという想いだ。四万十川環境の変化に敏感に気づき、危機意識を持っている。同時に、高齢化による漁業者の減少にも頭を悩ませ、その解決として販売促進や教育を始めているところもあった。

しかしながら、課題は大きく成長していくばかりで、解決の糸口はなかなか見つからないようだ。四万十川を良くしていくために、上流から下流が一つの流れとなって、協力していく体制が必要だと感じた。課題解決に向けた個々の取り組みを共有し、お互いの得意分野と苦手分野を補っていけば、良い流れができるのではないだろうか。

7団体に話を聞きながら、その問題は、この団体が得意だから協力すればどうだろう、その代わりにここの問題に協力できるのでは・・・と何度も思った。

今現在、7団体が揃って話し合う場がない。情報課題を共有し、相談しあう機会がなく、お互い面識がない人もいる。まずは、その機会を作り、お互いを知るところから始めたい。こんなにも四万十川を愛し、守り、伝える人々が上流から下流まで一つになれば、これほど強いチームはない。これからが楽しみだ。

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